研究課題
DNA 複製を経て生じる姉妹染色分体は、コヒーシンにより接着される。接着は、染色体分配、DNA修復の正確性を担保し、染色体安定性に必須の構造である。コヒーシンは長大なSMCサブユニットを中核とするリング構造のATPase複合体で、リングを利用して束ねる様にDNAと結合し、接着を形成すると考えられている (トポロジカルな DNA 結合)。本研究は、精製タンパク質を用いてコヒーシンの DNA 結合反応を試験管内再構成し、そのトポロジカルなDNA結合、及び接着形成の分子機構について明らかにすることを目的とする。2020年度は、コヒーシンの活性化因子であるローダータンパク質について解析を継続した。変異タンパク質を用いた再構成解析からローダー自身の DNA 結合部位を同定し、この活性がコヒーシンのトポロジカルな DNA 結合を促進するために必須であること、また、酵母細胞を用いた解析からローダーの DNA 結合モチーフがコヒーシンの染色体局在に必要であることがわかった。これらの知見を纏め論文として発表した。並行し、コヒーシンの DNA 結合構造を可視化するために高速原子間力顕微鏡を用いた解析を進めた。様々な条件検討を行い、観察像の解像度が上がった結果、 DNA が特定のドメインに結合する等、数種の結合様式が観察された。また、 DNA 複製で生じる姉妹 DNA どうしでの接着形成を試験官内再構成する為、出芽酵母コヒーシンとローダーを用いて、コヒーシンのトポロジカルな DNA 結合反応の再構成系を構築した。
2: おおむね順調に進展している
ローダーのDNA結合能を中心に詳細な解析を行い、コヒーシンのトポロジカルなDNA結合の分子機構について新たな知見を得て、論文として発表した。また、高速原子力間顕微鏡の観察条件の至適化が進んだことで、DNAに結合するコヒーシンの解像度が上がり、複数種の結合様式が見えてきた。
コヒーシンのDNA結合構造について、引き続き高速原子力間顕微鏡による解析を進める。解析数を増やすと共に、反応中間体やトポロジカル結合したコヒーシンを精製分離して構造を可視化し、コヒーシンのDNA結合構造の全体像を明らかにする。また、個々の再構成が可能になった出芽酵母コヒーシンとDNA複製反応を共役させ、姉妹DNAの接着形成を必要最小単位で再構成し、その形成機構を解析する。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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