研究課題/領域番号 |
19H03162
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
山形 敦史 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (20463903)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | シナプス / 結晶構造解析 / ホスファターゼ / SAMドメイン |
研究実績の概要 |
RPTPのうち PTPRS, PTPRD の細胞内タンデムホスファターゼドメイン全体およびC末端側D2ドメインをそれぞれ大腸菌内で発現させ精製した。また哺乳類の4つの Liprin-α につて各々のタンデム SAM ドメインを大腸菌内で発現させ精製した。それらの様々に組み合わせて結晶化を行ったところ、最終的に PTPRD の D2 ドメインと Liprin-α3 の組み合わせで結晶を得ることが出来た。SPring-8 BL41XU のビームラインを用いて 1.9 Å 分解能での回折データを測定し、分子置換法によって構造解析した。 PTPRD の D2 ドメインは Liprin-α3 の SAM1-SAM2 ドメインと結合していた。Liprin-α は SAM1-SAM2 の境界に CASK との結合領域であるループ領域が挿入されているが、そのループ領域の挿入部位は PTPRD との結合界面の逆側に存在し、お互いの結合を邪魔しないことが明らかとなった。PTPRD の D2 ドメインと Liprin-α3 との結合界面の構造より結合に必須なアミノ酸残基が同定され、実際にそれらの変異体タンパク質を用いた定量的相互作用解析によりそれらの残基の重要性を確認した。さらに CRISPR/Cas9 法を用いて変異 PTPRD のノックインマウスを作製し、それらの脳から初代神経細胞を培養した。PTPRD に作用してシナプス形成を誘導する IL1RAPL1 タンパク質をコートしたビーズとの共培養法を用いて、これらのノックインマウスで確かにシナプス形成が起きないことも確認し、PTPRD の D2 ドメインと Liprin-α3 との相互作用がシナプス形成に必須であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請では、3つの新規のシナプス形成の分子機構、1. シナプスオーガナイザーであるIIa型受容体チロシンホスファターゼ(RPTP)と、その細胞内ホスファターゼドメインに結合するリプリンαとの複合体形成、2. シナプスオーガナイザーであるニューレキシンと、それと相互作用する細胞接着因子SorCSとの複合体形成、3. シナプスオーガナイザーである LRRTMによる糖鎖認識についての構造基盤の解明を提案した。このうち、1. については初年度で目的の複合体の結晶構造解析と、それを用いた定量的相互作用解析やシナプス誘導解析に成功した。これらの結果をまとめて、2020 年 1 月には Nat. commun. 誌に発表することが出来た。残り 2. 3 . についても現在遂行中である。以上より、おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本申請で提案した3つの提案のうち、残りの 2. シナプスオーガナイザーであるニューレキシンと、それと相互作用する細胞接着因子SorCSとの複合体形成、3. シナプスオーガナイザーである LRRTMによる糖鎖認識についての構造基盤の解明を目指して研究を遂行する。2. については現在の所属である理化学研究所に設置されている加速電圧 200 keV のクライオ電子顕微鏡を利用した構造解析を遂行中である。一方、3. について結晶構造解析による解析を現在目指している。
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