研究課題
本研究ではギャップ結合チャネル関連タンパク質の高分解能構造解析をクライオ電子顕微鏡単粒子解析で行い、ギャップ結合チャネルを含むLarge pore channelの開閉機構と生理機能の解明を目的とした研究を行っている。今年度は、Cx32の野生型と神経疾患であるCMTXの原因となるCx32変異体のクライオ電顕構造解析を行った。いずれもナノディスクに再構成し、野生型はジャンクション型で、変異体はジャンクション型とヘミチャネル型の両方で原子構造を得た。野生型は複数のコンフォメーションが混じっている構造が得られた。N末端領域が不鮮明であることから、構造が動的で機能に関わる領域が不安定化していると考えられた。変異体は細胞外ドメインに構造変化がみられ、それがジャンクション形成を不安定化してヘミチャネルを生じさせることが示唆された。さらに、ヒトpannexin-1(PANX1)を哺乳動物細胞で発現、精製し、ナノディスク再構成を行った後、クライオ電子顕微鏡による高分解能構造解析を行った。野生型PANX1のapo状態(PANX1apo)、野生型PANX1に阻害剤を添加した状態(PANX1-PBN)、PANX1のC末端欠失変異体(PANX1ΔC)、PANX1のN末端欠失変異体(PANX1ΔN)を解析した。PANX1apoはN末端がチャネル通路内でファネルを形成し、通路を大きく開けている構造であるのに対し、PANX1-PBNはN末端領域が細胞質側に大きく構造変化すると同時に、脂質がチャネルの内側に存在することが確認され、チャネルの通路をブロックする密度が確認された。また、PANXΔCはPANX1apoと、PANX1ΔNはPANX1-PBNと非常に良く似た構造を取っていた。構造研究と機能解析、MDシミュレーションの共同研究を総合して、脂質がPANX1と相互作用しながらチャネル通路内へ移動する「脂質ゲーティング」が示唆された。この結果は論文にまとめて発表した。
2: おおむね順調に進展している
Cx32の構造解析が進んだことと、並行して進めていたPANX-1の構造解析を論文に発表できたため。
Cx32の野生型は動的で複数のコンフォメーションが混ざっている可能性が考えられるため、サブユニット単位で3D variabilityの解析を行って、クラス分けを行い、コンフォメーションの分離を目指す。変異体と野生型の原子モデルを比較して、導入された変異が起こす構造変化を先行研究の機能解析と組み合わせて考察する。
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Science Signaling
巻: 15 ページ: eabg6941
10.1126/scisignal.abg6941