研究課題/領域番号 |
19H03169
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
三島 正規 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (70346310)
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研究分担者 |
坂本 泰一 千葉工業大学, 先進工学部, 教授 (40383369)
田岡 万悟 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (60271160)
藤原 俊伸 近畿大学, 薬学部, 教授 (80362804)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 遺伝子量補償 / SHARP / Xist / NMR |
研究実績の概要 |
長鎖ノンコーディングRNAの一つであるXistは、染色体レベルでの転写を抑制する。このグローバルな転写抑制の分子レベルでの理解を目指し、XistとSHARPとの複合体の立体構造の解析を行い、遺伝子量補正における鍵となる分子間相互作用の構造基盤の確立に取り組んでいる。構造解析の手法としては、多次元NMR、SAXS(X線小角散乱)、X線結晶構造解析を用いている。またリボプロテオミクス(免疫沈降と質量分析)による細胞内での結合部位の解析、他の因子との関連の解析も行う。 今年度は、多次元NMR法によってNMR解析のための安定同位体標識タンパク質、安定同位体標識RNAの調製を行った。RRM23部分に関しては、良好なNMRスペクトルが得られており、NMR信号の帰属を完了しているので、種々の化学合成したRNAを用いてSHARP/Xist複合体に対して、スピンラベル導入による常磁性緩和効果からの長距離情報から得られるドメイン配向情報によって立体構造解析を進めた。並行して、XistのタンデムA-repeatのNMR構造解析も進めた。タンデムリピートでは、RNA-repeat間のダイナミクスによりRNA由来の信号が消失する、あるいは信号の激しい重複を起こす等の困難さが想定されるたが、複合体の解析に先立ち、RNA側を同位体標識し、RNA単体でのスペクトルの解析をすすめた。今年度新たに作成した安定同位体標識Xist(RNA)のNMR解析からも、Xistの物性に関する有用な情報が得られ、この情報をもとに今後のRNAのデザインについて、二量体化を防ぐ方針の検討を行った。また、リボプロテオミクスにより最適な結合RNA配列の同定を並行して行うため、Xistに対する解析システムの構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
部位特異的な非天然アミノ酸(分子内にアルキンをもつ)導入と、クリックケミストリーによる方法を確立した。また、マルチドメインでの解析に必要なドメイン選択的標識のためのsortaseによるドメイン連結法を確立したことから、実際にSHARPでの試料調製を進めている。1H-15N HSQCスペクトルの解析からSHARPのRRM23の領域は実際にA-repeatと十分な結合を示した。両者の結合は、比較的強い結合に際して観測されるslow exchangeであった。しかし、リンカー領域の柔軟性は高く、また、長期の解析ではこのリンカー部分で切断が起こることが分かった。また切断をおこしたRRM23は容易に凝集を起こすので、その対策として、精製の純度を高めるように変更した。今年度新たに作成した安定同位体標識Xist(RNA)のNMR解析からも、Xistの物性に関する有用な情報が得られている。この情報をもとに今後のRNAのデザインについて、二量体化を防ぐ方針の検討等、進展が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
SHARP/Xist複合体に対して、溶液状態の構造解析手法であるNMRやSAXSを用いて構造解析引き続き推進する。さらにX線結晶構造解析を行う。またXist上のSHARP結合サイト、第三の因子の関与についてリボプロテオミクスを進める。得られた結合サイトの情報に基づいて、構造解析に用いるA-repeatの長さ、配列等をさらに検討する。この際、本年度確立した同位体標識RNAの利用により条件検討が加速すると考えられる。X線結晶構造解析ではタンパク質やRNAの長さ等の微妙な差が、試料の性質に大きな影響を与え、解析の成否をしばしば左右することから、リボプロテオミクスの情報をもとに、試料(特にRNAの長さ、配列)の検討を行い、実際に複数のRNAを用いて結晶化を行う。
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