研究課題/領域番号 |
19H03174
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
田村 康 山形大学, 理学部, 教授 (50631876)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 小胞体 / 液胞(リソソーム) / オルガネラコンタクト |
研究実績の概要 |
本研究の目的はオルガネラ間の安定なコンタクト形成を仲介する因子の同定を行い,オルガネラコンタクトサイトの生理機能を明らかにすることである。この目的達成のために,オルガネラコンタクトサイトの局在する因子を同定するための実験系を独自に開発した。具体的には異なる2つのオルガネラ上にSplit-蛍光タンパク質やSplit-ビオチン化酵素を発現させ,その蛍光シグナルやビオチン化されたタンパク質の解析を通して,オルガネラ間の安定なコンタクト形成を仲介する因子の探索を行った。またあらかじめsplit-GFPプローブを用いてオルガネラ間コンタクトサイトを可視化した細胞に酵母過剰発現ゲノムライブラリーを導入し,GFPシグナルが増強する遺伝子,すなわちオルガネラ間コンタクトを亢進させる遺伝子の探索を行った。 当初予定していたSPlit-APEX2を用いたオルガネラコンタクトに局在する因子のビオチン化は効率が低く,再現性よく実験することができなかった。そこでタンパク質のビオチン化効率の向上を期待してSplit-APEX2の代わりにSplit-TurboIDを利用したところ,再現性よく実験を行うことが可能となった。この実験系を駆使することで,ヒトの培養細胞におけるミトコンドリア-小胞体間,リソソーム-小胞体間に局在する因子を特異的にビオチン化した。ビオチン化されたタンパク質をストレプトアビジンビーズによって精製し,LC-MSMS解析により同定した。さらに,出芽酵母のミトコンドリア-液胞間に局在する因子に関しても同様の解析を行った。現在新規因子を含む興味深いタンパク質の同定に成功しており,今後の研究によりオルガネラコンタクトサイトの新たな生理機能の解明が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的であるオルガネラ間の安定なコンタクト形成を仲介する因子の同定が順調に進んでいる。現在LC-MSMS解析で得られた候補遺伝子のキャラクタリゼーションを行っているところであり,今後の解析によって,オルガネラコンタクトサイトの新たな生理機能の解明が期待される。また解析に成功しているオルガネラの組み合わせも,ミトコンドリア-小胞体間,ミトコンドリア-液胞間,リソソーム-小胞体間を複数に渡っている。また生物種も出芽酵母に加え,ヒトの培養細胞において順調に研究が進行しており,当初の予定を超えて研究が進展している。ただしその一方で,ゲノムライブラリーを用いた遺伝学的な手法を駆使したオルガネラ間コンタクトを亢進させる遺伝子の探索はうまく行かなかったため,総合的におおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
現在オルガネラ間コンタクトサイトに局在する因子として同定されているタンパク質群のキャラクタリゼーションを行う。具体的には間接免疫抗体法や蛍光タンパク質を用いた顕微鏡による局在解析,細胞分画による生化学的な局在解析を行い,実際に対象のタンパク質がオルガネラコンタクトサイトに局在するかを確認する。確認が取れたらそのオルガネラコンタクトサイトに局在するメカニズムを相互作用因子を調べることで検討する。またその対象因子の欠損細胞を構築し,オルガネラの構造や機能への影響を調べることで,オルガネラコンタクトサイトの生理機能の検討を行う。ゲノムライブラリーを用いた遺伝学的な手法による,オルガネラ間コンタクトを亢進させる遺伝子の探索はうまく行かなかったため,あらかじめクローニングされているインサートDNAの領域が明らかになっているライブラリー(Yeast tiling collection)を利用するなどスクリーニング方法を工夫することを考えている。
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