研究課題/領域番号 |
19H03186
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
田辺 幹雄 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特任准教授 (00716871)
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研究分担者 |
野村 紀通 京都大学, 医学研究科, 准教授 (10314246)
樹下 成信 岡山大学, 自然生命科学研究支援センター, 助教 (60646917)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 薬剤耐性 / トランスポーター / 膜輸送 |
研究実績の概要 |
細菌が薬剤耐性を持つ原因の一つに多剤排出トランスポーターによる投与薬剤の排出が挙げられる。本課題ではグラム陰性菌の細胞質からペリプラズムに薬剤を排出するMajor facilitator superfamily(MFS)型の多剤排出トランスポーターの薬剤認識とその輸送機構の解明を目指しており、その目標達成のために特に2つの研究テーマを掲げている。 1)MFS型-多剤排出トランスポーターのモデルタンパク質であるMdfAを使い生化学、構造解析、シミュレーションを用いて、薬剤分子の認識やその排出の輸送サイクルを明らかにする。 2) 新規の病原菌由来の輸送体の構造解析を行い、薬剤輸送機構の解明を目指す。 本年度の研究実績として、 1)については、MdfAを認識する4つの抗体を用いてそれらがどのような構造状態を認識しているかをクライオ電顕を用いて確認することを目指した。前年度は分解能が10オングストローム程度で留まっていたデータについて、様々な条件で精製し直し、グリッドを作成したものの、分解能は10オングストロームから僅かに更新されたのみであった。MDシミュレーションを中心とした解析では現在も進行中であり、内開きから中間体を経て外開きの構造変化を順次追っている最中であるがその検証には時間を有する。MdfAと抗体のクロスリンク実験は進行中で、より安定な複合体の取得に取り組んでいる。 2)前年度にタンパク精製に成功したS.aureusのトランスポーターにおいては阻害剤存在下での精製に成功し、結晶を得ることができた。回折能は10オングストローム程度であったため、こちらも阻害剤の存在下でのタンパク質の構造を認識する抗体の取得について実験が進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
クライオ電顕によるマシンタイムとデータ解析のためのマシンタイムの利用は常に混雑しており、目的の達成に必要と思われるクライオ電顕観察を用いた条件検討とスクリーニング、また解析環境の確保に十分な時間が確保できていないことが問題である。精製や生化学の実験と解析に関しては条件検討が徐々に進んできており予定通り進行しているが、最終的に再現性と信頼性のあるデータを得るにはもう少し時間を有する。また変異体の活性が低下していることがタンパク質の熱安定性の低下も考えられ補足データとその解析に時間を必要としているため全体として少々の遅延がみられる。
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今後の研究の推進方策 |
1)MdfAと抗体のより安定な複合体の形成のためクロスリンク法を用いる。ユニフォームにクロスリンクされた複合体の取得を目指し条件検討や複合体の精製を行う。またナノディスクの条件検討を進める。MDシミュレーションについても引き続き解析を進める。2) S.aureusのトランスポーターは阻害剤との複合体の状態でより安定なタンパク質を取得することに成功したそのためこの試料を用いて抗体の作成に向けて進んでいる。また実験構造を得るまでにalphafold2を用いた構造からMDシミュレーションを開始している。構造予測から変異体の導入や活性測定と組み合わせて生化学手法を用いた輸送活性の解析により注力する。
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