研究課題
X線結晶構造解析および進展著しいクライオ電子顕微鏡技術による解析から、光合成タンパク質の構造が原子分解能で明らかとなり、その機能発現機構に対する理解は飛躍的に蓄積している。このような状況下で残された課題は、100を超える色素分子がポリペプチド鎖の所定の位置に正しく結合し、さらに10を超える色素-ポリペプチド鎖複合体が合体して大きな機能性複合体が形成される機構を明らかにすることである。この課題に挑戦するにあたり、光合成の光化学系タンパク質の一つである光化学系I(Photosystem I: PSI)のAssembly中間体の単離に成功している岡山大学の高橋裕一郎教授グループとの共同研究を行った。高橋教授グループは、成熟構造のPSI蓄積に必須の因子であるYcf3およびYcf4タンパク質を含むAssembly中間体の単離に初めて成功している。Ycf3は、PSI assembly過程のより初期に働く因子であると考えられており、一方Ycf4はよりAssemblyが進んだ段階で働くものと考えられている。どちらのサンプルも希少にしか得られず、これまで分光学的な解析が実現されていなかった。我々は、非常に少量のサンプルで実施可能な単一分子分光法を行うことで、初めてこれらの因子の蛍光スペクトルの測定に成功した。その結果、特にYcf3は各分子毎に大きく異なるスペクトルを示すことが明らかになった。これは、未成熟なPSI assembly中間体のさまざまな状態を初めて分離して測定した画期的な成果である。一方、Ycf4については、十分な希釈を行わない場合に凝集体として観測されることが明らかとなった。このことは、Ycf4がPSI assemblyに関係する多くの複合体を集積して巨大な複合体を形成し、迅速なassemblyを補助している様を反映していると考えている。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Plant Cell Physiology
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生物物理
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