昨年度、局所領域の解析により改善され た三次元密度図によって、PACヘテロ四量体における4サブユニットの会合様式を明らかにすることができたが、白色光下での構造であったため、基底状態と励起状態の2状態(くわえてその中間状態)の混合物の解析だったと予測できる。よってFADとその周辺構造の詳細な議論は難しいと考えた。そのため本年度は、予定通り赤色光下での構造解析に挑むべく、試料調製から始めた。しかし、発現系ではなく野生型Euglena gracilisからの単離のため収量が少なく、データ取得に十分な精製度をもち、かつ必要な量を得るのに難航した。高密度培養すると、光がミドリムシに十分照射されないため、細胞内で形成される光センサ-のサイズが小さくなる。そのため適度な濃度での培養が必要であり、精製プロトコールに必要な細胞量を回収するのに数ヶ月かかる。また、超音波による細胞破砕時に多量の葉緑体が混入することが問題の一つであることは当初からの問題として分かっていたが、超音波破砕機の出力の違うものを使用したところ、少しこの問題も改善した。また、スクロース不連続密度勾配遠心分離を行う際に、スイングローターよりもアングルローターの方が分離がよいという結果が得られた。このような改善を積み重ね、本年度の終わりにようやく、精製度の高い、白色光下でのデータ取得に使用したのと同じ品質の光センサータンパク質の精製に成功した。2.6マクログラム/Lの収量であり、以前と同程度の収量で精製度の高い試料が得られた。しかし、タンパク質の絶対量が少なくデータ取得までは至らなかった。
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