研究実績の概要 |
本研究では、リガンドの結合によるGタンパク質共役受容体(GPCR)の活性化からGPCRとの結合により活性化されるGタンパク質が解離するに至るまでのメカニズムを、PaCS-MD/MSMなどの最先端のシミュレーション法で明らかにすることを目指して研究を進めてきている。 この年度はPaCS-MD/MSMの一種であるdPaCS-MD/MSM法を応用して、研究対象としているGタンパク質共役受容体(GPCR)であるA2ARの内部深くにアンタゴニストT4Eが結合した安定状態の複合体からT4Eが解離するパスウェイを複数生成し、実験値とほぼ一致する標準結合自由エネルギーを得ることができ、論文を発表することができた(Hata, Tran, Marzouk, Kitao, Biophysics and Physicobiology, 18, 305-316, 2021)。更にアゴニスト3分子(adenosine, NECA, CGS216080)、アンタゴニスト2分子(caffeine, ZMA)についても同様の計算に成功し、結合親和性をほぼ再現する結果を得、現在論文執筆を進めている(Tran, Kitao)。 また前年度までに作成したA2Aにリガンド(NECA)と3つのサブユニットが存在するフルGタンパク質(Gs)が結合した活性化状態の構造を元に、GoとG12結合型の複合体構造の計算も行ったほか、それぞれのGタンパク質についてGDP結合型だけでなくGDP非結合型の計算も開始することができた。これらの違いをリガンド結合部位、重要なモチーフ、A2ARとGタンパク質の結合界面、Gタンパク質の構造に関して調べることで、有意な立体構造上の違いがあることを明らかになってきた。
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