• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実績報告書

DNAカーテンと粗視化シミュレーションによるコンデンシン分子モーターの機構解明

研究課題

研究課題/領域番号 19H03194
研究機関京都大学

研究代表者

寺川 剛  京都大学, 理学研究科, 助教 (20809652)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードコンデンシン / 粗視化分子動力学シミュレーション / 蛍光顕微鏡観察 / DNAカーテン
研究実績の概要

本研究では、粗視化分子動力学シミュレーションと1分子蛍光イメージングを併用することで、1分子蛍光イメージングだけでは明らかにすることができなかった、コンデンシン分子モーターの作動機構を解明することを目指している。今年度までに、高速原子間力顕微鏡によりコンデンシンの全体構造の観察を行った。また、ヒンジドメインの高速原子間力顕微鏡像をもとにポテンシャルエネルギー関数を構築して、それを用いた粗視化分子動力学シミュレーションを行うことにより、ヒンジドメインの開構造およびDNA結合構造を得ることができた。ここまでの研究成果を論文にまとめて、bioRxivに掲載した。また、DNAカーテン法を用いた1分子蛍光イメージングにより、コンデンシンのステップサイズを計測した。DNAカーテン法では、スライドガラス上に描画したナノパターン上にDNAの両端を固定することで伸長させて、その上のタンパク質の動態を観察する。当初の実験設計では、DNAの両端の距離が近すぎたため、その上のタンパク質のゆらぎが大きすぎてステップサイズの計測ができなかった。そこで、DNAの両端の距離が離れるようにナノパターンをデザインしなおして実験を行った。また、蛍光信号を自動的にトラッキングできるソフトウェアを自作した。その結果、ステップサイズを計測することができた。さらに、コンデンシンの全体構造をモデリングした。コンデンシンはSmc2、Smc4、Brn1、Ycg1、Ycs4といったサブユニットの複合体である。今年度、Smc2とSmc4とYcs4の複合体構造が電子顕微鏡によって観察された。本研究では、それらの構造にランダムコイルとしてモデリングしたBrn1と、Ycg1の結晶構造をマージすることによって、Smc2、Smc4、Brn1、Ycg1、Ycs4の複合体構造をモデリングした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

蛍光標識可能なコンデンシンの変異体(HA-tag付き)の単離・精製を行い、SDS PAGEで確認した。コンデンシンはプラスミドのGALプロモータの下流にクローニングし、酵母で強発現させた。発現したタンパク質をHis-Trapカラム・Strep-Tactinカラム・タグ・ゲルろ過カラムクロマトグラフィによって単離・精製した。量子ドットの抗体への共役を行った。量子ドットはSiteClick抗体ラベリングシステムを用いて、HA抗体と共役させた。HA-tagをHA抗体で認識させることにより、コンデンシンを量子ドットと結合させた。DNAカーテン実験を行うためには、そのためのデバイスを準備する必要がある。まず、ウエハスピン洗浄装置を用いてガラススライドを洗浄した。次に、厚膜フォトレジスト用スピンコーティング装置をHMDSを塗布した。さらに、スピンコーターを用いてPMGI-SF5S、ZEP-520A、エスペーサーを塗布した。そして、高速高精度電子ビーム描画装置を用いてパターンの描画を行った。その後、ドラフトチャンバーにおいて現像・エッチングを行い、電子線蒸着装置を用いてクロムを蒸着した。スラススライド上に描画したナノパターンにDNAを張り、DNAカーテンを蛍光顕微鏡観察した。そこに量子ドットで蛍光標識したコンデンシンをロードし、そのDNA上における動態を蛍光顕微鏡観察した。そして、トラッキングソフトウェアを独自に開発して、それを用いてコンデンシンのサブピクセルレベルのトラジェクトリを抽出し、ステップサイズを測定した。また、Smc2とSmc4とYcs4の複合体構造にランダムコイルとしてモデリングしたBrn1と、Ycg1の結晶構造をマージすることによって、Smc2、Smc4、Brn1、Ycg1、Ycs4の複合体構造をモデリングした。

今後の研究の推進方策

これまでにモデリングしたコンデンシンの全体構造を初期構造として、粗視化分子動力学シミュレーションを行う。粗視化分子動力学シミュレーションでは、1アミノ酸を1粒子、1ヌクレオチドを3粒子で表現した粗視化モデルをランジュバン方程式に基づいて時間発展させる。これにより、初期構造を用意すれば、平衡状態における構造を予測することができる。また、全原子シミュレーションにくらべて少ない計算量で平衡状態を実現することができる。コンデンシンのサブユニットであるYcg1は、Smc2とSmc4の複合体にBrn1を介して繋がれているが、複合体との結合・解離を繰り返していることが知られている。しかし、Ycg1がSmc2/Smc4複合体からどれくらい離れることができるかはわかっていない。本研究では、粗視化分子動力学シミュレーションによって、平衡状態におけるYcg1とSmc2/Smc4複合体の距離分布を明らかにする。次に、コンデンシンの全体構造の近傍に200塩基対のDNAを置いた構造を初期構造として、粗視化分子動力学シミュレーションを行う。平衡状態において、DNAがコンデンシンに結合することが予想される。これまでに、Smc2/Smc4複合体のヒンジドメインとヘッドドメイン、そしてYcg1がそれぞれ
DNAと結合することが知られている。しかし、コンデンシン全体構造にDNAがどのように結合しているかはわかっていない。粗視化分子動力学シミュレーションの結果として得られたコンデンシン/DNA複合体の構造を解析することにより、複数のDNA結合領域間の距離分布を明らかにする。その距離分布と、蛍光顕微鏡観察によって得られたステップサイズを比較することにより、コンデンシンの分子モーターとしての作動原理を考察する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] Reconstitution of protein functions on chromatin curtain2020

    • 著者名/発表者名
      寺川剛
    • 学会等名
      第43回日本分子生物学会年会
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi