研究課題/領域番号 |
19H03200
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
由良 敬 早稲田大学, 理工学術院, 教授(任期付) (50252226)
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研究分担者 |
鈴木 博文 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, 次席研究員(研究院講師) (60418572)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 発光タンパク質 / 分子進化 / 発光メカニズム / データベース / コンピュータシミュレーション |
研究実績の概要 |
20世紀の前半から、人類は地球の様々な空間の探索を行い、それにともないさまざまな発光生物の存在を報告してきた。大場裕一(中部大学)らは発光生物の情報を徹底的に収集し、その情報を「発光生物リスト・プロジェクト (LLL)」としてウェブ上に公開している。研究代表者と研究分担者はこのリストを出発点にし、その後に同定された発光生物を加え、これらの発光生物がもつ発光分子(タンパク質と低分子)を徹底的な文献検索で見いだし、発光生物と発光部位、発光タンパク質、発光低分子を接続した公開データベースの作成に取りかかった。 生物がもつ発光タンパク質は、アミノ酸配列の類似性から7種類のluciferaseと3種類のphotoproteinの総計10種類に分類できることがわかった。これらのうちの6種類にはすでにタンパク質の立体構造情報があることも明らかになった。また発光物質であるルシフェリンは、その化学構造の類似性から9種類に分類できることがわかった。つまり、発光タンパク質と発光物質は1対1の対応にはなっていないことがわかった。また、発光タンパク質をもつ生物の生活環境と発光波長の関係を可能な限り調べたところ、海棲発光生物の発光波長(平均484nm)の方が陸棲発光生物の発光波長(平均549nm)よりも有意に短いことがわかった。共通祖先由来と考えられるタンパク質の中でも異なる波長で発光するようになっていることから、その変化がどのように起こったのかを明らかにすることが次年度以降の目標となる。 これらの知見にもとづき、ホタルイカのゲノム塩基配列情報から、ホタルイカの発光に関与するタンパク質を推定することができた。ホタルイカは少なくとも2種類の光で発光することが知られているが、両波長の発光に関与するタンパク質候補をデータ解析から見いだすことができた(論文revise中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画においては、収集したデータをデータベースとして公開する予定であったが、2019年度中に公開することができなかった。データの収集に時間を要するとともに、今後の継続的運営を可能にするデータベース設計に時間を要した。現在、http://www.biohikr.life/においてそのテンプレートとなるウェブデータベースの公開を進めている段階である。 また、収集したデータを利用して、新規発光タンパク質の予測をできたことで、当初計画よりも先んじることができたが、その論文をジャーナルに掲載するところまで昨年度内にできなかった。 以上のことより、計画の進行がやや遅れていると判断した。しかしこの遅れは、2020年度には取り戻せると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究推進のために、研究室の学生を巻き込みながら研究メンバーを増やし、データ収集とデータベース構築を進めていく予定である。
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