研究実績の概要 |
去年度に発見した計算機上で光学収差を補正できる新しい「計算補償光学」を拡充させ、距離計測や超解像顕微鏡に適用することによりこれらの顕微鏡技術の精度を向上させることを目的として研究を進めた。 今年度は、計算補償光学の高速化を実現した。計算補償光学には、波面から伝達関数を生成する過程があるが、ここには多数の2Dフーリエ変換と、3Dフーリエ変換のステップがあり、それぞれ計算コストが高い。これを回避するため、一度作成した伝達関数から異なる波面の伝達関数を近似的に得られる新しい方法を開発した。この方法を用いれば、波面計測に必要な時間を5倍程度短縮させることができる。さらに、計測する領域を小さく限定することにより、さらに高速化が推進され、全体として当初と比較して10倍以上の高速化を実現できた。この成果を、去年度に出願した特許(特願2020-120496)に追加して、国際出願をおこなった(PCT/JP2021/026265 )。 さらに、生物の持つ複雑な屈折率差を可視化するため、新しいホログラフィック顕微鏡を応用した定量位相計測をおこなった。これにより、細胞の屈折率を可視化し、補償光学に有益なデータを取得した(Tahara et al., 2021, Rosen et al., 2021)。さらに、超解像顕微鏡と多色ライブイメージングを応用して細胞内における染色体末端集合化と染色体機能との関係を明らかにした(Rajesh et al., 2021)。
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