研究実績の概要 |
本研究において発見した計算機上で光学収差を補正できる新しい「計算補償光学」を拡充させ、距離計測や超解像顕微鏡に適用することによりこれらの顕微鏡技術の精度を向上させることを新しい目的として研究を進めた。 去年度までに実証した本技術について、本年度は、計算補償光学のユーザビリティを向上し、実際の生物学の画像へと応用するための研究を行った。特に、画像の中の異なる領域を分割し、個別の領域に対して光学収差を計測する技術を開発した。また、領域分割を効率的に行うために、グラフィカルユーザーインターフェースを作成し、複数の3次元領域を容易に設定できるツールを作成した。さらに、分割された領域で計測された光学収差を用いて画像全体を補正するために、計測した領域からの距離に応じて補正を適用する方法を開発した。 この分割して補正する方法を超解像顕微鏡3D-SIMに適用するためには、再構築プログラム全体に渡る修正が必要となった。さらに、領域に分割することにより、構造化照明の縞模様の位相が変わってしまうことが大きな問題点となった。当初は、この位相を再構築対象の領域の画像から直接取得する方法を試みたが、光学収差によりボケた画像では位相を正確に計測することが困難であった。そのため、構造化照明の縞模様が明確な小領域からのピクセル数の数値を用いて位相ずれを理論的に算出する方法を開発して解決した。 さらに、去年度に見出した二光子顕微鏡画像を一光子顕微鏡画像に変換する方法を応用することにより、二光子顕微鏡画像であればSN比を効果的に向上できるデノイジングやデコンボリューション方法を開発した。この方法を用いて、最大で60倍以上のSN比向上に成功した。(特願2022-132546) その他、細胞の屈折率の可視化に繋がるホログラフィー技術について論文として成果を発表した(Tahara et al., 2022)。
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