今年度は2例の活動期ANCA関連血管炎患者、12例の安定期ANCA関連血管炎患者、また10例の健常人の末梢血を採取した。採取した全血、また分離したPBMC、もしくは好中球からRNAを抽出し、計25検体についてRNAシークエンス(RNA-Seq)を行った。それらの症例の全血DNAについて全ゲノムシークエンス(WGS)実験も行った。昨年度までに得られた結果と併せてRNA-Mutectアルゴリズムを軸に解析した。 その結果、16人の活動性ANCA関連血管炎患者から108個の体細胞変異を同定した。16人中15人(93.8%)の患者は1つ以上の体細胞変異を有していた。1患者における体細胞変異数の中央値は4個で、その数はANCA関連血管炎以外の疾患コントロール群や、安定期における体細胞変異数と有意な差をみとめなかった。また、変異部位は翻訳領域と非翻訳領域とで有意な偏りをみとめなかった。 108個の変異にそれぞれ1個の遺伝子を対応させ、合計95個の遺伝子を得た。95個の遺伝子のうち6個については複数の患者において共通して観察され、うち2つはユビキチンシステムに関連するものであった。108個の変異のうち37個はアミノ酸配列を変化させるようなものであり、さらにうち20個はタンパク質の機能に大きく影響を与えると予測された。その20個の変異の機能的意義を解析するため、K562細胞におけるCRISPRによるノックアウトデータを解析したところ、うち2つの遺伝子で抗原提示シグナルが上昇することが分かった。寛解導入後に16人中12人の患者を追跡調査したところ、81.4%の体細胞変異が検出されなかった。さらに、91.7%の機能喪失型変異が消失した。 以上から、活動的な疾患状態を示すAAV患者の一部で、病的な影響を及ぼす可能性のある体細胞変異を発見した。これらの変異の大部分が寛解導入後には検出されなかった。
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