研究課題/領域番号 |
19H03213
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
日下部 岳広 甲南大学, 理工学部, 教授 (40280862)
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研究分担者 |
鈴木 穣 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (40323646)
中井 謙太 東京大学, 医科学研究所, 教授 (60217643)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ホヤ / 脳 / 感覚器 / 網膜 / 進化 |
研究実績の概要 |
ホヤと脊椎動物の間で相同と考えられる組織・器官として、間脳(網膜・松果体・視床下部など)、鼻プラコード、後脳(運動中枢)に的を絞り、トランスクリプトームを解析した。ホヤはカタユウレイボヤ、モルグラ類などを、脊椎動物はメダカを用いた。器官の中でも、視細胞、ドーパミン細胞、GnRH細胞など、特定の細胞種に絞った解析も行なった。 (1)胚組織・器官のトランスクリプトーム解析:組織・器官のトランスクリプトーム解析を行った。特にホヤ胚において1細胞レベルの遺伝子発現解析を行い、これまで特異的遺伝子がほとんど知られていなかった脳内光受容器のレンズ細胞などについて特異的に発現する遺伝子群を明らかにした。 (2)脳領域・感覚器の発生に関わる細胞間シグナル、小分子RNA、転写因子の機能解析:脳領域・感覚器の発生への関与が推定される細胞間シグナル分子およびその受容体について、ノックダウンや機能阻害、野生型および変異体の強制発現などの実験を行い、表現型を解析した。FGF、ephrinなどの細胞間シグナルおよびOtxなどの転写調節因子とドーパミン細胞の発生の関係について新しい情報が得られた。 (3)ホヤ-脊椎動物間の細胞機能の比較解析:ホヤの原型組織の細胞群の機能は、形態や遺伝子発現から推測に留まっているものが多い。鼻プラコード化学受容細胞、脳内グリア細胞、運動中枢のニューロン等についてカルシウムイメージング法により、細胞の活動を可視化し、機能解析を行なった。鼻プラコード由来の化学受容細胞においては脊椎動物の嗅細胞とよく似た細胞内シグナル伝達経路が使われていることを実験的に示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞を特徴づける遺伝子群の解明から細胞機能レベルのホヤ-脊椎動物間比較まで、当初計画していた成果が得られており、成果の一部を原著論文として公表することができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ホヤについてはほぼ全身の細胞について1細胞レベルの遺伝子発現について詳しい情報が得られているので、これを活用した解析を推進する。発生に関わる遺伝子制御ネットワークと細胞機能の両面からホヤと脊椎動物の間の比較解析を推進し、脊椎動物の高度に発達した脳と感覚器の出現を可能にした背景および進化プロセスの解明につなげる。
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