研究課題
ホヤと脊椎動物の間で相同と考えられる組織・器官として、間脳(網膜、松果体、視床下部等)、鼻プラコード、後脳および中軸組織(フロアプレート、脊索、内胚葉索)について、RNA-seq法によりトランスクリプトームを解析するとともに、これらの組織の発生調節に関わる細胞間シグナル、小分子RNA、転写因子の機能解析を行った。ホヤはカタユウレイボヤ、モルグラ類などを、脊椎動物はメダカを用いた。器官の中でも、視細胞、ドーパミン細胞、GnRH細胞など、特定の細胞種に絞った解析も行った。主な成果として、ホヤ脳内ドーパミン神経細胞群の正確な細胞系譜と形態形成過程を解明し、転写調節因子と細胞間シグナル因子によるドーパミン神経細胞の発生制御機構を明らかにし、脊椎動物のドーパミン神経細胞の発生機構との比較を行い、原著論文として発表した。1細胞トランスクリプトームと転写調節機構の解析から、胚の中軸組織の発生機構について脊椎動物とホヤの間の普遍性と相違点を明らかにし、原著論文として発表した。また、感覚神経細胞の発生について、転写調節因子のはたらきを操作することにより2種類の感覚神経の性質をあわせもつ新しい性質の感覚神経細胞が作られることを報告した。さらに、カルシウムイメージング、光遺伝学、行動解析を組み合わせて、運動ニューロンやグリア細胞の発生過程および生理機能を解析し、ホヤ-脊椎動物間の比較を行い、運動ニューロンについては原著論文として報告した。
2: おおむね順調に進展している
細胞を特徴づける遺伝子群の解明から細胞機能レベルのホヤ-脊椎動物間比較まで、当初計画していた成果が得られており、成果を複数の原著論文として公表することができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
引き続き1細胞レベルの遺伝子発現情報を活用し、発生に関わる遺伝子制御ネットワークと細胞機能の両面からホヤと脊椎動物の間の比較解析を推進する。カルシウムイメージングと光遺伝学を用いた解析が軌道に乗ってきたので、これらの手法を駆使して細胞機能を明らかにする。これらの解析から得られる情報を統合して脊椎動物の高度に発達した脳と感覚器の出現を可能にした背景および進化プロセスの解明につなげる。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件)
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