本研究課題は、ゲノム縮小による増殖速度の低下と実験進化による増殖速度の回復のメカニズムを遺伝子発現量のゲノム周期性で説明することを目的としている。当初設定した研究内容が四つの項目に分けられており、下記通りに成果が得られている。 ① ゲノム縮小による発現周期のずれ:全ゲノム縮小大腸菌に対するトランスクリプトーム解析を行ったけっか、ゲノム長に問わずにゲノム周期の数が恒常的であり、周期の振幅と位相がゲノム縮小や増殖速度に相関があることが分かった。 ② 増殖速度の回復に伴う発現周期の回復:実験進化によって、ゲノム縮小大腸菌の増殖速度が向上されたが、その増殖速度の上昇が最大菌体量の低下に繋ぐトレードオフ関係を発見した。 ③ 増殖速度と発現周期の同調回復に寄与するゲノム変異:進化前後の大腸菌に対するゲノム変異解析を行い、進化による増殖速度の回復は特定の遺伝子機能によるも出なはないことが分かった。 ④ 遺伝子発現の周期に繋ぐ遺伝子適応度の周期:遺伝子発現ゲノム周期性が増殖速度の周期性と負の相関関係にあり、ゲノム縮小が単一遺伝子欠損の単純な相加関係にないことが分かった。 さらに、今年度は上記各項目における補足的な検証実験をしながら、多階層解析を行った。ゲノム縮小、増殖速度、最大菌体量、進化による変異蓄積量、遺伝子発現の周期性、遺伝子モジュールを解析し、各指標同士の相関関係を明らかにした。以上、本研究課題で計画されたすべての研究課題を完了し、段階的な成果をまとめた複数原著論文がすでに公開されているほか、集大成となる原著論文を作成している。
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