研究課題/領域番号 |
19H03220
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福田 光則 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (50311361)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 低分子量Gタンパク質Rab / 分泌経路 / 上皮細胞 / Rab panel / スクリーニング / ノックアウト細胞 / 可溶性蛋白質 / 膜輸送 |
研究実績の概要 |
分泌経路とは、小胞体で合成された可溶性の分泌蛋白質や膜蛋白質を輸送小胞に包み込み、ゴルジ体経由で細胞膜へと輸送する代表的な小胞輸送のルートである。一般的に、小胞体から積み荷を含む小胞が出芽する際には、可溶性分泌蛋白質と膜蛋白質は同じ輸送小胞に選別されており、ゴルジ体からの出芽の際にも同様な仕組みが用いられると考えられている。しかし、ゴルジ体から出芽する可溶性分泌蛋白質の小胞と膜蛋白質の小胞が同一であるかは、これまで実験的には証明されておらず、それらの選別・輸送の仕組みは未だ明らかにされていない。本研究では、分泌蛋白質の選別・輸送に重要な役割を果たすRab6に焦点を当て、特にゴルジ体における可溶性分泌蛋白質の選別・輸送機構を明らかにすることを目指している。本年度は、これまでに樹立したRab6ノックアウトMDCK細胞株とモデル分泌蛋白質(シグナル配列を付加した成熟時間の短いsuperfolder GFP [ss-sfGFP])を用いて、Rab6がモデル分泌蛋白質の分泌や基底膜の形成に必須であること、分泌されなかった可溶性分泌蛋白質がリソソームに蓄積することを見出した。次に、Rab6がどのような機構で可溶性分泌蛋白質の輸送・選別過程を制御するかを理解するため、候補と考えられる複数のRab6エフェタクー分子のノックアウト細胞株をCRISPR/Cas9のゲノム編集技術を用いて樹立した。これらのノックアウト細胞株を用いて、Rab6欠損と同じ症状(可溶性分子の分泌不全とリソソームへの蓄積、及び基底膜形成不全)を示すものがないか一部解析を行い、候補Rab6エフェタクー分子が明らかになりつつある。また、昨年度に樹立したRabノックアウト細胞のライブラリーを用いて、上皮細胞の極性形成やシリア形成に関与する新規Rabの同定やその機能解析にも成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、上皮組織のモデル細胞であるMDCK細胞を用いて、Rab6の欠損により可溶性蛋白質の分泌不全、基底膜の欠損、可溶性蛋白質のリソソームへの蓄積などが起こることを見出し、Rab6がゴルジ体からの分泌小胞の出芽以降で重要な役割を果たすことを明らかにした。また、この過程で機能すると想定される複数のRab6エフェクター候補分子のノックアウト細胞株の樹立に成功するなど、期待通りの成果を挙げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、Rab6のエクフェクター候補分子のノックアウト細胞株の機能解析を進めることで、Rab6を介する分泌蛋白質の選別・輸送の分子基盤の解明を行う。
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