研究実績の概要 |
ミトコンドリアの丸ごと分別・除去機構は生物種を超えて保存された基本的な機構であり、オートファジーの仕組みを利用することから、「マイトファジー」と呼ばれる。マイトファジーはミトコンドリアの質・量管理に寄与しており、その破綻は細胞の恒常性を損ない、様々な病気を引き起こすことが明らかになりつつある。一方、細胞内の多様な経路がマイトファジーの制御に関与していることが示唆されているが、その機序については、未だに不明な点が多く残されている。本研究では出芽酵母をモデル生物に用いて、マイトファジーの素過程を分子レベルで解明するとともに、その多様な分子機構を理解することを目的としている。
当該年度においては、小胞体膜タンパク質挿入経路GETとミトコンドリア外膜タンパク質排出ATP加水分解酵素Msp1のマイトファジーにおける役割について解析を行なった。まず、GET経路で働くGet3とMsp1の二重欠損株では、それぞれの単独破壊株と比較してマイトファジーがより強く抑制されることを見出した。同様の結果が、Get3欠損株にMsp1の酵素活性を不活化した変異体を発現させた場合においても得られた。次に、出芽酵母マイトファジーを駆動するミトコンドリア外膜タンパク質Atg32を負に制御する脱リン酸化酵素複合体Ppg1-Farの細胞内局在を調べたところ、野生型細胞で見られる小胞体パターンがGet3欠損細胞では主にミトコンドリアパターンに変化していることが明らかとなった。そこで、Get3, Msp1, Ppg1の三重欠損株を作成しマイトファジーを調べたところ、野生型と同様なレベルまで回復することがわかった。これらの知見から、Msp1はPpg1-Farのミトコンドリア表面からの排除に寄与している可能性が提起される。
|