今後の研究の推進方策 |
本年度の研究から、アクチン波がU251細胞の三角形の辺(細胞端)に沿って移動をし、頂点(突き出した部位)に向かってダイナミックに濃縮することがわかった。この結果は「細胞のかたちによるアクチン波の挙動の制御」すなわちアクチン線維が細胞の突出した部位に濃縮する仕組みを明らかにするための重要な端緒となると考えられる。そこで、HaloTag-actinと全反射顕微鏡を組み合わせてアクチン分子の1分子解析(Katsuno et al, Cell Rep, 2015)を行い、アクチン波がU251細胞の細胞端に沿って移動する際のアクチン線維の挙動(重合・脱重合及びその方向性)を解析する。 我々は、これまでに、神経軸索に沿ったアクチン波の移動にシューティンが重要な役割を果たすことを見出してきた(Katsuno et al, Cell Rep, 2015)。そこで、U251グリオーマ細胞のシューティンをノックアウトし、U251細胞の三角形の辺に沿って移動するアクチン波の移動速度を解析する。 また、シューティンは細胞接着分子L1-CAMと相互作用することでアクチン波移動のための駆動力を生み出すと考えられる。そこで、シューティンとL1-CAMの連結を切るドミナントネガティヴ体(Baba et al, eLife, 2018)を発現させてU251細胞の三角形の辺に沿って移動するアクチン波の移動速度を解析する。 以上の研究を通じて、「細胞のかたちによるアクチン波の挙動の制御」を、アクチン線維とシューティンの細胞内動態を視点として明らかにする。そしてさらに、「アクチン波による細胞のかたちの制御」と「細胞のかたちによるアクチン波の挙動の制御」からなるポジティヴフィードバックループの検証を行うことで、アクチン線維の自己組織化と細胞移動の仕組みに迫る。
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