研究課題
本研究では、「アクチン線維がいかにして細胞内で局所的に自己組織化をして細胞移動を引き起こすことができるのか」を、我々の研究グループがこれまでに明らかにした「アクチン波」の移動の分子メカニズムとその特徴的な挙動から解明することを目指す。前年度までの研究で、レーザー加工技術を用いてガラス上に三角形のラミニンのマイクロパターンを施し、そこにU251細胞を培養することで、U251細胞の形態を三角形に変形させることに成功した。アクチン波は、U251細胞の三角形の辺(細胞端)に沿って移動をし、頂点(突き出した部位)に向かってダイナミックに濃縮した。また、アクチン分子の1分子ライブイメージングを行い、アクチン波内のアクチン線維が重合と脱重合を繰り返しながら重合端を先頭として細胞内を移動することを明らかにした。また、シューティンもアクチン線維と結合・解離を繰り返しながら移動することがわかった。さらに、シューティンをノックアウトしたU251細胞の作成に成功した。今年度は、アクチン波の細胞端に沿って移動する移動速度が、アクチン線維とU251細胞端に生じる角度と負の相関を示し、シューティンノックアウトにより低下することを明らかにした。また、U251細胞の頂点の角度とアクチンの頂点への濃縮とが負の相関を示すことを明らかにし、この関係を解析してアクチン波の移動を数理モデル化した。さらに、シューティンのノックアウトによりU251細胞が生み出す牽引力が低下して、U251細胞の移動のための極性化が遅れることを見出した。本研究から、「アクチン波による細胞のかたちの制御」と「細胞のかたちによるアクチン波の挙動の制御」がポジティヴフィードバックループを形成し、このフィードバックがアクチン線維の細胞内における自己組織化および細胞移動の開始に関与することが明らかとなった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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