研究課題
ダイナミンによる微小管制御について、ダイナミン1が腎糸球体ポドサイトの一次突起に微小管と共局在し、ポドサイトの突起形成や細胞形態の安定化に必要であることを明らかにした。さらにin vitro再構成系により、コムギ無細胞タンパク合成系にて調製したダイナミン1が微小管を束化することを見出した。ダイナミンによるアクチン制御機構解明のために、in vitroでダイナミン1によるアクチン線維束の超微構造を電子顕微鏡により観察した。その結果、アクチン線維束周囲にダイナミンがらせん状に重合すること、らせん状重合体の外側にもアクチン線維が結合することを見出した。ダイナミン2についても同様の結果を得たが、ダイナミン1に比べ、アクチン線維束との親和性と線維束活性がより高いことが判明した。ダイナミンはリポゾームと反応するとリポゾーム膜をチューブ状に変形させその周囲にせん状に重合するが、さらにアクチン線維を加えるとアクチン線維がチューブに沿って結合した。これによりダイナミンが膜とアクチン線維とをリンクさせることが明らかになった。骨格筋細胞のT管形成におけるダイナミンの機能を解明するために、培養筋芽細胞にダイナミン2をBAR タンパクBIN1と共発現させ、T管様構造の形成と動態に対する影響を調べた。野生型ダイナミン2はBIN1との結合を介してそのGTPアーゼ活性が抑制され、BIN1により形成されるT管様構造を安定化させた。一方、遺伝性筋疾患中心核ミオパチー(CNM)の変異を導入したダイナミン2はGTPアーゼ活性を上昇させ、T管様構造形成を減少させた。以上より、ダイナミン2がT管形成維持に必要であり、CNM変異によるT管形成維持の不全がCNMの分子病態機序である可能性を示した。
2: おおむね順調に進展している
ダイナミンによる微小管ダイナミクス制御については、ダイナミン1がポドサイトの微小管に局在し、微小管を束化すること、ポドサイトの突起形成や細胞形態の安定化に必要であることなど上述の知見をまとめ学会発表するとともに、現在論文にまとめている(The Mon La, Tachibana, et al. 投稿準備中)。ダイナミンによるアクチン制御については、内橋教授(名古屋大、研究分担者)との共同研究により、アクチン線維束形成、分散における分子動態の高速AFM観察を進めている。また成田教授(名古屋大)との共同研究を新たに開始し、クライオ電顕観察によるダイナミンーアクチン線維束の分子構造解析に着手した。骨格筋細胞のT管形成におけるダイナミン2の機能、ダイナミン2CNM変異によるCNMの分子病態機序に関する上述の知見を学会発表するとともに、論文にまとめて投稿した(Fujise, et al. 投稿中)
ダイナミンによる微小管ダイナミクス制御については、微小管安安定化におけるダイナミンの働きを解明するため、チューブリンアセチル化との関わりを精査する。また、ダイナミン1による微小管の安定化は、分化したポドサイトにおいてのみ顕著となることから、細胞の分化とダイナミン機能との関連を明らかにする。ダイナミンによるアクチン制御については、共同研究による高速AFM観察とクライオ電観察を進め分子の構造と動態を明らかにする。骨格筋細胞のT管形成において、ダイナミン2の関与が明らかにされたものの、分子の作動機構は未解明である。今後はIn vitro再構成系によりこれを明らかにする。マラリアダイナミンについては赤血球寄生マラリア原虫のシゾんときにおける局在がわかってきたので、その詳細を明らかにするとともに、マラリアダイナミンによる膜変形の作動機構解明に注力する。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Life Sci Alliance
巻: 3 ページ: e201900549
10.26508/lsa.201900549.
J Clin Invest.
巻: 129 ページ: 2145-2162
10.1172/JCI79990.
https://www.researchgate.net/scientific-contributions/48055760_Matthias_Groszer