研究課題/領域番号 |
19H03227
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池ノ内 順一 九州大学, 理学研究院, 教授 (10500051)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | タイトジャンクション / 細胞膜 / クローディン / コレステロール / スフィンゴミエリン / 極性輸送 / 上皮細胞 / アピカル膜 |
研究実績の概要 |
上皮細胞には、外界からの栄養吸収を担う細胞膜構造である微絨毛や上皮細胞同士の結合や情報伝達の場として機能する細胞接着装置などの細胞膜構造が存在する。近年、これらの細胞膜構造を構成する膜タンパク質の同定が進んだものの、脂質と膜タンパク質が集合体を形成し、細胞膜構造の形成に至る過程はほとんど明らかになっていない。申請者はこれらの膜構造形成において、膜タンパク質の集合・離散の制御にスフィンゴミエリンやコレステロールなどの脂質が重要な役割を果たしていることを見出した。本研究課題では、上皮細胞における細胞膜構造形成を可能にする細胞内でのスフィンゴミエリンやコレステロールの機能や輸送・局在化の分子機構の解明を通して細胞膜構造の構築メカニズムの解明を目指している。今年度は、アピカル膜へのスフィンゴミエリンの輸送制御機構に関わる新たなシグナル経路Xを同定した。さらに、シグナル経路Xの活性に依存したアピカル膜への脂質輸送制御機構の生理的な意義を探索した結果、上皮細胞の低浸透圧ストレスへの応答に関与することを見出した。すなわち、上皮細胞は低浸透圧ストレスに曝されると、水分子の流入によって、形質膜の張力が増大する。細胞膜張力がある閾値を超えて亢進すると、細胞膜が破裂し、細胞死に至る。今年度の研究によって、低浸透圧ストレスに応じてシグナル経路Xが活性化し、アピカル膜にスフィンゴミエリンが輸送されることによって、細胞膜の張力を緩和し細胞死を回避するという、上皮細胞の低浸透圧ストレスの回避機構を見出した。実際に、このシグナル経路Xを不活性化した上皮細胞は、低浸透圧ストレスに極めて感受性が高くなり、細胞死が誘導されることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アピカル膜へのスフィンゴミエリンの輸送制御に関わる新たなシグナル伝達経路を同定し、更にその生理的意義についても明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は今年度の研究成果を論文に纏めるとともに、引き続き、スフィンゴミエリンの極性輸機構に関わる新たな因子群の同定を進めたい。
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