研究課題/領域番号 |
19H03229
|
研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
木梨 達雄 関西医科大学, 医学部, 教授 (30202039)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 細胞接着 / インテグリン / Rap1 / talin / kindlin3 |
研究実績の概要 |
2019年度に確立したBAF/LFA1/HT-talin1またはHT-kindlin3を用いた一分子イメージングの系を用いて、内在性kindlin3またはtalinをshRNAによるノックダウンした場合、いずれの場合でもPMA刺激によるICAM1接着が低下し、talin1並びにkindlin3の結合頻度と結合時間が低下した。したがってこの過程ではtalin1並びにkindlin3の結合は相互依存的であった。LFA1細胞外領域のコンフォメーションとtalin1、 kindlin3の結合関係を調べた結果、進展・閉型(中親和性)コンフォメーションではtalin1/kindlin3結合の増加はほとんどみられず、進展・開型(高親和性)のコンフォメーションによってtalin1およびkindlin3の結合頻度と結合時間が増加した。高親和性型コンフォメーションの場合、talin1の結合にkindlin3は必要なかった。また、αL鎖のGFFKRを欠失したBAF/LFA1ΔGFFKRは細胞外領域が進展・開型(高親和性)になり、未刺激でICAM1に接着し、HT-talin1の結合頻度および結合時間が増加したが、その結合にはkindlin3は必要ではなかった。以上の結果からkindlin3はLFA1が進展・開型(高親和性)に変化するときに必要であり、進展・開型になると必要ではないことが判明した。さらに、進展・開型LFA1はRap1を著しく活性化し、Rap1活性化とtalin1およびkindlin3は相互依存的であった。すなわち、ICAM1に結合した進展・開型LFA1からのoutside-inシグナルによってRap1が活性化し、Rap1とtalin1、 kindlin3間のpositive feedbackによって接着が増強されていることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一分子計測によるtalin1が基本的にICAM-1の結合動態を決定していること、kindlin3の一過性結合によってインテグリンが活性化されること、talin1とkindlin3のLFA1の結合がコンフォメーション依存的におこることが一分子計測によって初めて示されたことの意義は大きい。2019年度の結果から刺激があってもICAM-1がない状態ではtalin1, kindlin3の結合レベルが低いことから、ICAM-1結合による細胞内へのシグナル(outside-inシグナル)の重要性が示唆されていたが、ICAM1結合による高親和性型コンフォメーションにLFA1が変化するとRap1とtalin1/kindlin3間によってpositive feedback機構が働くことが示された。これは従来のinside-out/outside-inシグナルによるインテグリン活性化モデルから同時双方向シグナルによるインテグリン制御を示したものとして意義は大きい。
|
今後の研究の推進方策 |
1.LFA1コンフォメーション変化によるRap1とtalin1/kindlin3間のpositive feedback機構の分子基盤を解明する。また、F-actin阻害、 vinculin、 filamin、 myosin IIA、RIAM等のknockdown/knockoutによる結合動態への効果を明らかにする。さらにTalinに関してFERMドメインの変異、rodドメインの欠失による効果、Kindlin3についてはFERM/PHドメインの変異を調べる。 2 リンパ球および癌細胞を用いた動態測定 上記で明らかになったRap1活性化からTalin, Kindlin3の結合動態に影響を与える素過程に着目し、その改変による効果を検証する。介入法としてknockdown/knockoutによる欠損、分子間相互作用部位の変異挿入を検討する。これらの変異を導入したマウスを作成し、リンパ球の血管内皮接着過程、組織内移動、増殖・分化過程を調べる。また、癌細胞として悪性度の高いGlioblastoma (GBM)に着目する。Rap1活性化からTalin、 Kindlin3の結合動態に影響を与える素過程を改変した細胞株を作成し、in vitroの接着動態、Sphere形成能、移植による腫瘍形成能、浸潤・転移能への効果を明らかにする。
|