研究実績の概要 |
過年度において樹立したLFA1/ICAM1, talin1およびkindlin3の一分子イメージング系から、インテグリンLFA1による接着を制御するtalin1およびkindlin3の作用機序が明らかになったことから、今年度はケモカイン刺激による細胞移動あるいは血管内皮接着を再現した潅流下における特性を調べた。細胞移動においては先端側では一過性のLFA1とICAM1の接着が中心であり、talin1の分布と結合に一致し、細胞体の部分ではkindlin3とtalin1による安定したLFA1/ICAM1の結合が存在した。潅流によるshear stressがかかると接着が増強するとともにtalin1, kindlin3とLFA1の結合が増加した。これらの結果から、生理的環境によるLFA1とICAM1の結合様式が細胞内因子talin1とkindlin3の結合動態によって調節されていることが明らかになった。リンパ球動態に重要なインテグリンα4β7およびα4β1についても結合特性を調べた結果、ローリング接着、停止接着を媒介するときにRap1, talin1, kindlin3の必要性と役割が異なることが明らかになった。kindlin3は高親和性結合による停止接着に必要であるが、弱いローリング接着には必要がないこと、kindlin3欠損T細胞は、高密度のICAM1を発現している比較的内径が大きい高内皮細静脈に接着して、リンパ節内に移動できることが判明した。一方、talin1はLFA1/ICAM1によるローリングにも必要であり、talin1欠損T細胞は高内皮細静脈に接着できず、リンパ節に移動できないことが判明した。今後、細胞外をLFA1、細胞内をα4β7およびα4β1にしたキメラ分子等を作成して、talin1およびkindlin3の結合動態を明らかにしたい。
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