現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
骨格筋における異種細胞の相互作用として、我々が注目してきたのは、それらの細胞間シグナリングに関与する増殖因子、それらの増殖因子のシグナリング効率を制御する細胞外基質や増殖因子レセプター、そしてそれらにより活性化される転写因子・転写制御因子などである。それらの個々の要素を明らかにするだけでなく、それらの反応カスケードを解明する必要がある。 特に、骨格筋と相互する細胞として重要な腱細胞に着目したが、この細胞については、系譜も分化機構も不明なところが多いのが現状であった。そこで本研究ではまず、骨格筋幹細胞や多様な細胞への分化能力を有する神経堤細胞で発現する膜型プロテアーゼADAM19について細胞系譜特異的ノックアウトマウスを作成し、それが、軟骨分化を抑制し腱分化を促進することを見出した(Arai H., et al, Cell Rep., 2019) 。ADAM19は、増殖因子BMPのレセプターの細胞外ドメインの切断ectodomain sheddingを介して、そのシグナリングを負に制御し、それが腱分化を促すことも示唆された。一方、ゼブラフィッシュおよびマウスを用いて、今まで謎であった、骨格筋に接する線維芽細胞・腱細胞系譜の前駆細胞で発現し、その分化を制御する転写因子EBF3を見出すことにも成功した(Kuriki M, et al、Development 2020)。これらはいずれも、それぞれの遺伝子の役割だけでなく、既知の増殖因子や転写因子との関係についてもコンディショナルノックアウトマウスを作成して示したもので、高い新規性を有する。
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