研究実績の概要 |
申請者は、タンパク質合成装置と考えられてきたリボソームが、リプログラミング物質実体であることを突き止めた(Ito et al., Scientific Reports, 2018)。振り返ってみると、「ヒト皮膚細胞が乳酸菌を取り込むと細胞塊を形成する」という現象は、乳酸菌体内に充満するリボソームに起因する結果であったと考えれば得心がいく。細胞運命の転換現象は明らかになったが、運命転換機構はまだ解明されていないことから、本研究において、リボソーム誘導型多分化能細胞の分子メカニズムを解析することで、初期発生システムを解き明かし、多能性の意義を問うことが本研究の目的である。 最初のステップとして、ナショナルバイオリソースプロジェクト(遺伝学研究所)より入手した大腸菌リボソームを構成する54種類のタンパク質の発現ベクター(His-tag付与)を用いた。個々のリボソームタンパク質発現ベクターを感染させた大腸菌を培養後、IPTG処理を行い、タンパク質合成を誘導したが、解析に用いるにはタンパク質の産生が少なかった。そこで、様々な発現ベクターを調べたところ、新たな細胞用発現ベクターを見出すことが出来たので、現在、高効率なタンパク質産生を試みている。
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