研究課題
申請者は、乳酸菌をヒト皮膚細胞に取り込ませると、リプログラミングが誘導され、細胞に多能性を付与することを世界に先駆けて報告した(Ohta et al., PLOS ONE, 2012)。その後、タンパク質合成装置と考えられてきたリボソームが、リプログラミング物質実体であることを突き止めた(Ito et al., Scientific Reports, 2018)。細胞運命の転換現象は明らかになったが、運命転換機構はまだ解明されていないことから、本研究において、リボソーム誘導型多分化能細胞の分子メカニズムを解析することで、初期発生システムを解き明かし、多能性の意義を問うことが本研究の目的であった。申請者は、ヒト線維芽細胞に取り込ませたリボソームは、細胞質だけなく核内に局在していることを既に報告したが(Ito et al., 2018)、実際にリボソームが核内で機能していることを示す興味深い現象を見出した(未発表データ)。例えば、ATAC解析を、リボソームを取り込んだ細胞塊を用いてATAC-seqを6時間後と72時間後に行なったところ、山中4因子に含まれるOCT4やc-MYCの結合領域は6時間後でクローズになっていたが、72時間後ではオープンになっていた。 逆に、SOX2、Nanog、KLF4の結合領域は、6時間後ではオープンになっていたが、72時間後ではクローズしてしまうことから、リボソームが多能性獲得に関わる一連の主要な転写因子の発現を制御していることが示唆された。さらには、リボソームを取り込んだヒト線維芽細胞(C)は、エピジェネティクな修飾(H3k9acのアセチル化)が誘導されていたが、コントロールのヒト線維芽細胞(B)では観察されなかった。リボソームが、山中4因子によるiPS細胞作成時と同様に、クロマチンを様々にエピジェネティク修飾し、多能性獲得のための遺伝子発現を制御していることが示唆された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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