研究課題/領域番号 |
19H03237
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
花嶋 かりな 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (80469915)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ブロードマン脳地図 / 領野 / 大脳皮質 / 発生 / ニューロン |
研究実績の概要 |
多様な細胞から構成される大脳新皮質は、投射標的や形態が異なるニューロンから構成される6層構造を、領野ごとに修飾した秩序だった3次元の細胞構築を形成することで視覚・体性感覚・随意運動などの高次の情報処理を担っている。大脳皮質の進化の過程において、ニューロンの数の増大とともに表面積が増加したが、脳の機能局在をあらわす領野の構築メカニズムについては、これまで知見が極めて乏しかった。本研究では、大脳皮質を構成するニューロンのうち、末梢感覚器官からの情報伝達を担い、ブロードマン脳地図において領野間で最も厚さが異なる第4層のニューロンに焦点をあて、大脳皮質領野の分化を担う分子・細胞機構を明らかにすることを目的として行った。前年度までに確立した時期特異的産生細胞の標識システムを用い、体性感覚野の第4層ニューロンが生み出されるタイミングでタモキシフェンを投与したのちに、標識細胞の動態について隣接する領野のニューロンとの移動と配置パターンについて比較解析を行った。その結果、大脳皮質板に侵入するタイミングの違いが、最終的な層特異的配置の差異を生み出すことを見出した。さらにin vitroおよびin vivoにおける樹状突起形態の経時的解析より、領野特異的ニューロンの樹状突起パターンが、神経活動非依存的に獲得されることを新たに見出した。これらの違いを担う内因性機構を明らかにするために、体性感覚野第4層に分化するニューロンと同時期に産生される運動野のニューロンの比較において、異なる発現を示す遺伝子群についてパスウェイ解析を行った結果、体性感覚野第4層において樹状突起の発達に関わる遺伝子群の有意な発現上昇を見出した。これらの一連の解析より、大脳新皮質の領野特異的なニューロンの分化と形態特性を生み出す分子機構が新たに解明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はCOVID-19による研究室の入室制限により一部の計画に遅延が生じたが、大脳皮質4層ニューロンの分化特性について新たな知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
大脳皮質の第4層のニューロンは末梢感覚器官からの情報伝達を担い、ブロードマン脳地図においても領野間で最も厚さが異なることから、第4層ニューロンの分化機序を担う分子メカニズムを解明することは大脳皮質領野形成において重要な課題として残されている。今後はこれまでに確立した時期特異的産生細胞の標識システムを用い、体性感覚野の第4層ニューロンが生み出されるタイミングでタモキシフェンを投与したのちに大脳皮質細胞を分散、培養を行いTdTomato標識細胞のダイナミクスについて以下の項目に焦点を当てて解析を行う: 1)in vitro培養下における、運動野および体性感覚野特異的マーカー遺伝子の発現と分化能力の検証、2)発生期における領野間の特性が獲得されるタイミングを明らかにするために、異なる発生ステージに各領域から単離されたtdTomato 陽性細胞の単一細胞トランスクリプトームから得られた分子群について機能解析を行い、大脳皮質ニューロンの不均一性が生み出されるメカニズムを明らかにする。
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