研究課題
哺乳類特有の脳構造である大脳新皮質は、多様なニューロンから構成される6層構造を、領野ごとに修飾し、秩序だった3次元の細胞構築を形成することで、体性感覚や随意運動などの高次の情報処理を担っている。進化において大脳皮質ニューロンの数の増加とともに表面積が拡大したが、脳の機能局在をあらわす領野の構築機構については、知見が得られていなかった。本研究では、大脳皮質領野の細胞構築の違いがどのようなメカニズムによって生み出されるのかを明らかにするために、発生期の大脳皮質において領野特異的な神経前駆細胞に発現する分子機能に焦点を当て、異なる領野に統合する細胞の分化動態について解析を行った。これまでに時期特異的に産生されるニューロンの標識システムを確立し、体性感覚野の第4層ニューロンが生み出されるタイミングでタモキシフェンを投与することにより、同時期に誕生したニューロンの領野間での追跡・比較が可能となった。初めに領野間の特性が確立するタイミングを明らかにするために、異なる発生ステージに各領域から単離した標識細胞の培養下における分化能力について検証した結果、これらの細胞が視床軸索入力非依存的に分化することを見出した。さらに、これらの領野特異性を早期に規定する分子基盤を明らかにするために、予定運動野および体性感覚野域から単離した神経前駆細胞の経時的トランスクリプトーム解析を行い、それぞれに有意に活性化されるシグナル伝達経路を新たに同定した。これらの主要な分子群についてマウス胚の脳室帯に導入し、胎生期および生後発達期において解析した結果、領野特異的に作動する細胞の分化プログラムを見出し、ブロードマン脳地図における細胞構築の差異を生み出す分子基盤を初めて確立した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Development, Growth & Differentiation
巻: 64 ページ: 379~394
10.1111/dgd.12802