現在までにGRHL3と相互作用する候補タンパク質としてUSP39を同定し、その機能解析を進めてきた。その結果、USP39分子がPrickle1などのPCP関連遺伝子の発現に必要であることを明らかにした。そこで本年度は、USP39分子がどのような活性を介してノンカノニカル経路を活性化しているか詳細な解析を進めた。つまり、USP39には2種類の機能、splicing制御と脱ユビキチン化を介したタンパク質分解制御が提唱されているため、そのどちらの機能に依存しているか検討した。まず、splicing制御に関しては、Usp39欠損マウス胚で発現低下した分子やUsp39のsplicing標的となっている転写産物についてsplicingパターンに変化が起きているかRNA-seqで同定された転写産物の構造を解析した。その結果、Usp39欠損マウス胚で、顕著なsplicing異常は観察されなかった。次に、脱ユビキチン化制御の可能性を検討するため、マウスのユビキチン活性化酵素であるUbe1に注目した。もし、Usp39による脱ユビキチン化活性の低下が原因であったとすると、Usp39欠損胚で観察された異常は、ユビキチン活性を低下させることで一部回復することが想定される。そこで、この仮説を検証するため、マウスのUbe1遺伝子のヘテロ変異マウスをCrispr-CAS9システムを用いて作製し、Usp39ヘテロ変異マウスを交配させて、Usp39ホモ変異胚でかつUbe1ヘテロ変異胚を回収し、表現型を解析した。その結果、Usp39ホモ;Ube1ヘテロ変異胚は、Usp39欠損胚で観察される中内胚葉の移動異常などが回復することが分かった。これらの遺伝学的な解析結果から、USP39によるPCP関連遺伝子の活性化には、USP39分子による脱ユビキチン化機能を介したタンパク質分解が関与することが示唆された。
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