研究課題
移動能力を欠く植物が、絶えず変動する光環境で効率よく光合成を行うためには、光合成の場である葉緑体の機能を柔軟かつ精密に制御する必要がある。本研究では、酸化還元を基盤としたタンパク質の翻訳後制御であるレドックス制御に注目する。近年、葉緑体のレドックス制御系は、多くのタンパク質(制御因子群と標的群)が関わるネットワーク上システムとして再認識されており、そのシステム全体の分子基盤や生理意義の解明が重要な課題となっている。本研究課題では、分子生物学・生化学から生理生態学までを貫徹する基礎研究を行い、葉緑体機能を統御するレドックス制御系を包括的に理解する。2020年度の課題においては、レドックス制御の標的タンパク質の新規同定および制御の分子基盤の解明を重点的に行った。組換え体タンパク質を用いた生化学解析を主として実施し、結果として、葉緑体セリン合成経路に関与する3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PGDH)と葉緑体デンプン分解経路に関与するホスホフルクトキナーゼ(PFK)を新規のレドックス制御の標的として決定した。さらに、レドックス制御による酵素活性への影響や制御に重要なシステイン残基の特定も行い、これらのタンパク質のレドックス制御機構を分子レベルで明らかにした(JBC 2000; Plant Cell Physiol. 2021)。また、ゲノム編集を用いて新規のレドックス制御系の変異株シロイヌナズナを作出し、その表現型解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
新規のレドックス制御標的タンパク質を同定し、その制御の分子基盤も明らかにすることができた。この成果はレドックス制御系が操る葉緑体機能に関する知見を拡張するものであり、本研究課題の目標達成に確実に寄与するものであるため、本課題はおおむね順調に進展していると言える。
2つのタンパク質(PGDHとPFK)をレドックス制御の新規標的として同定し、その制御の分子基盤も明らかにできたが、それらのin vivoでのレドックス応答およびその役割については明らかになっていない。今後は、生理学解析を軸とした研究を行うことでこの問題に取り組む。
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