本年度も、根冠内部の位置に応じて構成細胞が機能を転換させる機構の解明と、時空間的に統御された物質生産と分泌経路が根と土壌環境の相互作用に果たす役割の解明に取り組み、以下の成果を得た。 (1) 根冠内の位置に応じて構成細胞が機能を転換させる機構の解明: 根冠細胞の最外層への移行に同期した機能転換の過程を、水平光軸型動体トラッキング顕微鏡によりライブイメージング観察した。根冠最外層におけるオルガネラの消化と液胞化にオートファジーが機能することを明らかにした。これらの成果をまとめた論文をDevelopment誌で発表し、当該号のResearch Highlightや著者インタビューで注目論文として紹介された。所属機関からプレスリリースを行った。またコルメラ最外層細胞で規則的に活性化されるオートファジーが、これらの細胞の層状の剥離に機能することを見出した。 (2) 時空間的に統御された物質生産と放出経路が根と土壌環境の相互作用に果たす役割の解明: 根冠組織において、トリプトファン由来の抗菌化合物の産生と組織表面での活性化が糸状菌に対する病害抵抗性を賦与することを示唆する結果を得た。タンパク質相互作用を可視化するFRET-FLIM 法により,根冠細胞でトリプトファン由来の抗菌化合物の産生を担う酵素複合体メタボロンが形成されていることを見出し、これらの成果を学会発表した。 (3) 根冠ムシレージ分泌の可視化と構成因子の同定: シロイヌナズナの根冠細胞における根冠ムシレージの分泌領域を間接的に蛍光観察する方法を開発した。この方法を用いることで培地中の栄養条件がムシレージ分泌に与える影響を明らかにした。また根冠外層でムシレージの主要成分の産生に機能する遺伝子の同定に成功した。
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