研究課題
天然オーキシンであるインドール-3-酢酸(IAA)の代謝不活性化経路は、実験植物のシロイヌナズナでは、IAAの酸化、IAAのメチルエステル化、IAAの配糖体化、IAAのアミノ酸付加の4種類の不活性化経路が提唱されてきた。しかしながらIAAの構造が単純であることから、単純な代謝物分析による経路の解明は困難であり、いずれの不活性化経路が生理的に重要な役割を果たすのかは、不明であった。これまでの知見では、IAAにアミノ酸(Asp・Glu)を付加して不活性化するGH3酵素と、IAAをoxIAAへ酸化する2-オキソグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼDAO酵素の2つが、IAAの主な不活性経路であると長らく考えられてきた。本研究において、GH3酵素とDAO酵素がそれぞれが独立にIAAを不活性化するのではなく、GH3酵素とDAO酵素が直線状に並んだ単一の不活性化経路でIAAを代謝不活性化するとの証拠を得た。すなわちIAAはGH3酵素によりIAA-AspとIAA-Gluに不活性化された後、これら2つのIAA-アミノ酸複合体はDAO1によって酸化され、oxIAA-AspとoxIAA-Gluへと代謝されることを明らかとした。さらに、IAA-アミノ酸複合体を加水分解するILR1酵素がoxIAA-アミノ酸複合体もoxIAAへと加水分解することを明らかとした。以上のことから、IAAの代謝不活性化では、GH3とILR1がIAAにアミノ酸を付加、加水分解することでIAAを一時的な貯蔵体にし、DAO酵素がIAA-アミノ酸複合体を不可逆的に酸化することで、IAA貯蔵体の量を調節するという新しいIAA不活性化経路を明らかにすることができた。さらに、GH3の阻害剤を用いた解析から、世界で初めてIAAの代謝回転速度を実験的に見積もることに成功した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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