研究課題/領域番号 |
19H03256
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
小林 一也 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (50360110)
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研究分担者 |
関 まどか 岩手大学, 農学部, 助教 (20700488)
坂元 君年 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (50361465)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 核内受容体 / プラナリア / カンテツ / 脂溶性リガンド |
研究実績の概要 |
研究代表者はRNA-seq解析によって有性化因子の刺激で発現が上昇する遺伝子の中に核内受容体とアノテーションがつくものがあり、この遺伝子(Dr-nhr1)をRNAi法によって遺伝子ノックダウンした無性個体はたとえ有性化因子を投与しても全く生殖器官が誘導されないことがを明らかにしている。この結果は 、有性化因子の刺激の下流で、脂溶性リガンドの産生と核内受容体の発現が起こっていることを示唆する。そして、この有性化機構は寄生性の種にも保存されていると予想されている。 これまでに、核内受容体Dr-NHR1の脂溶性リガンドを同定することを目指し、有性化因子粗精製画分Fr. M0M10を用いる生物検定系を確立した。無性個体と有性個体との間でメタボローム解析を行ない、有性個体に有意に多く含まれている脂溶性化合物を候補因子として7種絞りこんだ。また、メタボローム解析において対象外化合物であったレチノイン酸も核内受容体のリガンドとして働くことが知られており、候補物質とした。検定の結果、Dehydroisoandrosterone(テストステロンの前駆物質)とレチノイン酸が有力な脂溶性リガンドと推定された。一方、寄生虫カンテツを用いた研究では、プラナリア核内受容体Dr-NHR1のオルソログ候補遺伝子をオルソファインダーによって探索したところ、3種候補遺伝子を得ることができた。研究分担者が保有するカンテツの性成熟系からさまざまなステージングのRNAを準備して定量PCR解析を行ったところ、性成熟過程特異的に発現が上昇する遺伝子を見つけることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プラナリアDr-NHR1の脂溶性リガンドを検証するための実験系を確立し、脂溶性リガンドを推定することができた。また、寄生性扁形動物カンテツのDr-NHR1のオルソログ候補遺伝子を絞り込むことができたので、(2)おおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、脂溶性リガンドとして推定された2物質(Dehydroisoandrosteroneとレチノイン酸)のさらなる検証を行う。これらの化合物の関連物質(例えば、テストステロンやレチノイン酸代謝物)やその阻害化合物にプラナリア有性化の促進/抑制効果があるのかを確かめる。また、核内受容体Dr-NHR1に対するポリクローナル抗体を得るためにウサギ抗血清が用意できたので、Dr-NHR1ノックダウン個体を用いてウェスタンブロッティングや免疫染色法で検証していく。Dr-NHR1に対するポリクローナル抗体が確実に得られた場合、免疫沈降法による標的遺伝子の探索にのぞむ。寄生性扁形動物カンテツを用いた研究では、得られたDr-NHR1のオルソログ候補遺伝子のノックダウン実験を行い、オルソログの検証を行う。
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