研究課題/領域番号 |
19H03257
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
木村 圭志 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50332268)
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研究分担者 |
広田 亨 公益財団法人がん研究会, がん研究所 実験病理部, 部長 (50421368)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 核小体 / 染色体 / 細胞分裂期 / RNA / 細胞周期 |
研究実績の概要 |
「(計画1) 核小体タンパク質のM期での機能の解明」に関しては、研究代表者等は、siRNAを用いた大規模なスクリーニングにより同定した核小体因子のうちで、M期で最も顕著な表現型を示したNOL11に関して解析を進めた。研究代表者等は、NOL11がWDR43, Cirhinと、NWC複合体を形成することを見出した。さらに、NWC複合体がpre-rRNAを足場にM期染色体の表面(PR)に結合すること、Aurora Bのセントロメアへの局在を促進することにより、セントロメア機能を制御することを見出した。この研究結果はNucleic Acids Researchに受理された。 また、13クラス、128種類のrRNAプロセシング因子をノックダウン(KD)し、複数の因子のKDがM期に影響を及ぼすことを見出した。これらの因子のうち、SNRNP200のKDがsororinのスプライシングを阻害され、M期染色体の姉妹分体間の接着に異常が生じた。また、SNRNP200のKDがATM/ATRを介して多極紡錘体を誘導することを見出した(投稿準備中)。 「計画2) 核小体RNAのM期での役割」に関して、研究代表者等は、RNA除去が以M期染色体骨格タンパク質の局在にも影響を与えることを見出した。そのうちで、コンデンシンIの局在に最も大きな影響が生じたので解析を進めた。染色体に局在するRNAとコンデンシンIの液-液相分離が、コンデンシンIの染色体局在に寄与することを見出した(投稿準備中)。 「計画3」間期細胞での核小体構造変化がM期に及ぼす影響の解析」に関しては、間期で核小体が崩壊した際に、Wee1キナーゼが蓄積することによってcdc2キナーゼ活性が抑制され、M期開始が遅延することを見出した。現在、ユビキチンリガーゼの制御を中心にWee1蓄積の原因を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(計画1)のプロジェクトでは、新規の核小体タンパク質複合体NWC複合体を発見し、この複合体がAurora Bの局在制御を介してセントロメア機能に重要な役割を持つことを見出していた。本成果は、Nucleic Acids Researchに受理された。また、複数のrRNAプロセシング因子のKDがM期進行に影響を与えることを見出した。そのうちで、SNRNP200のKDによって、姉妹染色分体間の接着の異常、多極紡錘体の形成など、複数の表現型が観察されることを見出した。本成果は、論文投稿を準備している。このように、計画1はおおむね順調に進んでいると考える。 (計画2)のプロジェクトでは、RNAが液-液相分離を促進することにより、コンデンシン等のM期染色体骨格タンパク質の局在を制御することを見出した。現在、RNAとコンデンシンIの染色体骨格の維持に関する役割を解析しており、論文投稿を予定している。本成果は、液-液相分離の新たな役割を提唱するもので、計画2に関しては当初の計画よりも進展していると考えている。 (計画3)のプロジェクトは、他の2つのプロジェクトと比較して進展は遅れているが、間期での核小体崩壊がM期開始を遅延させ、その原因がWee1キナーゼの蓄積をつきとめている。現在は、ユビキチン化に関わる酵素を中心にそのメカニズムを解析している。 以上、総合的に判断して、本研究計画はおおむね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
(計画1)のプロジェクトでは、13クラス、128種類の核小体に局在するrRNAプロセシング因子のKDし、いくつかの候補因子を得た。そのうち、SNRNP200のM期での役割に関しては論文への受理を目指す。また、PLRG1、SF3B14に関してもM期染色体の動態制御に関して興味深い表現型を見出しているので、分子メカニズムの解明を目指す。 また、核小体タンパク質MYBBP1Aが後期促進複合体APC/Cユビキチンリガーゼの制御因子であるCdc20と結合すること、そのKDがM期の進行に影響を与えることを見出した。また、MYBBP1AのKDが間期核形態にも影響を与えることを見出している。MYBBP1Aに関しては、鐘巻将人博士(遺伝研・教授)が開発したオーキシンデグロン(AID)法により細胞周期特異的に分解し、M期での機能を精査する。本研究では、核小体因子とユビキチン化との関連も解析したい。 (計画2)を、今後の最重点課題としたい。まずは、RNAとコンデンシンIの液-液相分離がM期染色体の構造制御に及ぼす影響を精査し論文にまとめる。さらに、他の骨格タンパク質とRNAとの関連も解析する。さらに、M期染色体の表面(PR)は核小体由来のRNAと核小体タンパク質が局在するので、PRにおける液-液相分離の寄与についても研究を進める。 (計画3」のプロジェクトでは、核小体崩壊がどのようなメカニズムでWee1を蓄積させるか、ユビキチン化酵素を中心に解析をすすめる。また、rRNAの転写促進、あるいはプロセシングを抑制することにより核小体を肥大させたさいにM期に影響を解析する。
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