研究課題
高等動植物や酵母のような真核生物の細胞分裂・増殖に際して、先ず細胞質中のミトコンドリアなどオルガネラが分裂・分配し、その後核分裂・細胞質分裂へと進むが、オルガネラの動態を考慮した細胞分裂の研究はほとんどなかった。本研究ではこれらオルガネラの分裂情報がどのように細胞核に伝達され、最終的な細胞核分裂、細胞質分裂がもたらされるのか、その仕組みとその物質的背景を明らかにしてきた。この研究プロジェクトでは高等植物や原始緑藻の他に原始紅藻Cyanidioschyzon merolae (シゾン)を基盤材料として選んだ。シゾンは①細胞核の他に6種の包膜オルガネラを最少セットの1個含むこと、②葉緑体を含んでいるため、オルガネラの分裂を光の明暗で100%同調化できること、更に③真核生物として初めて100%ゲノム解読していること、そして④各種オルガネラの単離を可能等、多くの特徴がある。そこでシゾンの同調培養系をさらに高度にし、各オルガネラの分裂順位の詳細を解析した。葉緑体、ミトコンドリア、ペルオキシソームについては、これらの順に、それぞれの分裂装置(リング)を使って分裂すること、更に各分裂装置の物質(糖繊維、ダイナミン等の他、未知の20~40種のタンパク質)の存在を確認した。ペルオキシソームは、ミトコンドリアの解体された分裂装置を再利用し、最後に分裂するが、分裂した2個の娘ペルオキシソームは、それぞれ娘ミトコンドリアに結合しセットになった。その後、両極にあったTOP(キネシン様物質)が娘ミトコンドリア-ペルオキシソームのセットの分配を行い、細胞核紡錘体に移動すること等が明らかになった。その結果、細胞核分裂が生じた。続いて細胞膜の収縮を起こす物質(EF1α)が機能し、次に中央細胞膜分断に関わる分子類(ESCRT-III, ALIX等)が使われ、最終的にVPS4によって細胞質の分断が起きた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cytologia
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