研究課題
2022年度には固着器官で変態開始時に活性化されるGタンパク質シグナル経路の仮説を裏付ける実験を実施した。GABAが変態開始因子であることから、代謝型GABA受容体と共役するGi経路がGq-Gs経路の上位に位置している可能性が浮上し、検証した結果、確かにGi経路が関わっていることを明らかにした。Gi経路はbeta/gammaサブユニットを介してPLCbetaの活性化を担うこと、GIRKチャネルを活性化して変態を負に制御している可能性についても明らかにした。これまでの結果を総合し、ホヤの変態はGABAの下流でGi-Gq-Gsタンパク質が連続的に活性化され、最終的にcAMPの上昇が引き起こされることがトリガーとなるという経路図を得た。ホヤ幼生は固着器官で物体に固着することによって変態を開始するが、固着後直ちに変態はせず、数十分の持続的な固着が必要であることを我々は以前明らかにしていたが、この経路図、特に抑制性の側面があるGABAの関与はこの時間間隔が設けられる仕組みを説明できるものである。本年度の大きな成果は、ジアシルグリセロール (DAG)の変態への関与を明らかにしたことである。変態開始に必要な酵素PLCbetaはIP3と共にDAGも産生することから、ホヤ幼生にDAGのアナログ分子を投与したところ、変態が誘導された。DAGのターゲットとして、固着器官で発現する新規の構造を持ったタンパク質をコードしている遺伝子を同定した。この遺伝子はホヤの属する尾索動物にのみ認められることから、この新規遺伝子の獲得が尾索動物の変態の進化を促す役割を担っていた可能性がある。甲状腺ホルモン関係では、TPOの間充織での新しい発現の同定、間充織と内柱の両方からのシグナルが変態時の細胞増殖誘導に必要であることを解明した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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