研究実績の概要 |
多くの生物は約24時間周期の環境変化を予測するために、概日時計を持っている。動物においては行動、生理、代謝、内分泌など含む、非常に広範囲の活動に24時間の周期性が観察される。その概日時計の中枢は脳に存在する複数の神経細胞群(時計細胞)であることが分かっている。キイロショウジョウバエにおいては、時計細胞の正確な数が同定されており、時計細胞間の神経ネットワークは非常に注目度の高い研究である。 キイロショウジョウバエ概日時計の時計細胞間ネットワークを明らかにするために、本年度はpdf、CCHa1突然変異体、またそれら二重変異体の解析を行った。抗体を用いた免疫染色により、pdf変異体、CCHa1変異体、二重変異体では、時計タンパク質の発現量が変化することが明らかになった。これにより、予定通り、概日時計の出力因子が、概日時計本体にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることができた。また、それら概日時計の出力因子の突然変異体と時計遺伝子の突然変異体の二重変異体を作製することで、概日時計が停止した状態における出力因子の役割についても研究を進めることができた。初年度から継続していた時計細胞特異GAL4系統の探索がひと段落して、研究をまとめることができた。現在Split-GAL4系統の作製に取り組んでいる。それぞれの研究結果の一部は、Sekiguchi et al., 2020, J Biol Rhythms、Herrero et al., 2020, Curr Biol 、Fernandez-Chiappe et al., 2020, J Neurosciで報告した。その他、時計遺伝子発現リズムを可視化するための、新規生物発光レポーター系統の作製に取り組んだ。系統の確立は完了したが、イメージングを行うまでには到達していない。
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