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2019 年度 実績報告書

動物のヒトへのなつき行動における遺伝子・神経回路および行動学的基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19H03270
研究機関国立遺伝学研究所

研究代表者

小出 剛  国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 准教授 (20221955)

研究分担者 高橋 阿貴  筑波大学, 人間系, 准教授 (30581764)
高浪 景子  国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 助教 (70578830)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードマウス / 野生系統 / ヘテロジニアスストック / 家畜化 / 遺伝子発現 / 神経細胞
研究実績の概要

本研究では、人になついたマウスを活用して、社会性と能動的従順性との関連をさらに詳細に明らかにすると共に、能動的従順性に関わる神経回路を明らかにする。次に、見つかった脳領域における発現遺伝子の網羅的解析を行い、発現遺伝子と社会性との関連がみられるか解析する。最後に、ゲノム編集技術によりその遺伝子を改変して、能動的従順性と社会性との関連をより直接的に解析する。社会性は人の社会不安障害、コミュニケーション障害や自閉症などとも関連していることから、本研究で明らかになった成果をもとに、ヒトの精神疾患や発達障害などの原因の理解や将来に向けて治療法の開発などへ応用の道筋にもつなげたいと考えている。昨年度は、野生由来のマウスをもとに選択交配を行うことで樹立した人へのなつき行動の高い集団(選択群)と非選択群(コントロール群)を用いて比較解析を進めた。主な解析内容は、遺伝子基盤の解析、神経回路の解析、そして行動学的基盤の解析である。これまでに、選択群とコントロール群の脳から採取した海馬を用いて抽出したRNAをもとにRNA-seq解析を行った。その結果、選択群とコントロール群で有意に発現の異なる137個の遺伝子を同定した。さらにネットワーク解析を行い、人へのなつき行動に関連する可能性のある遺伝子ネットワークの同定にも成功している。また、人へのなつき行動を制御している可能性のある神経細胞をc-Fos発現解析により同定しつつある。これらの結果は、マウスの人へのなつき行動に関わり遺伝的また神経学的基盤の解明につながると期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度は主に遺伝子発現解析とそのネットワーク解析、さらにc-Fosの発現を指標にした「なつき行動」により活性化された神経細胞の解析を中心に進めた。人への高いなつき行動について選択された2集団からそれぞれ10個体ずつ、選択交配を受けていないコントロール集団2集団からもそれぞれ10個体ずつ用いて合計40個体の脳の海馬を採取した。さらに抽出したmRNAを用いて、RNA-seq解析を行い、人へのなつき行動に関わる遺伝子発現の違いを調べた。その結果、有意に発現の異なる遺伝子の同定とネットワーク解析により遺伝子ネットワークの同定に成功している。これらの研究成果は現在投稿論文としてまとめつつある。したがっておおむね順調に研究が進行していると判断した。

今後の研究の推進方策

動物の人へのなつき行動は家畜化において重要な行動要素であるが、そのような行動変化が生じる神経メカニズムは不明である。なつき行動がどのような神経回路を介して引き起こされるか明らかになれば、そのメカニズムの解明に向けて大きな進歩になる。そこで、昨年度の研究の継続で、なつき行動のテスト後に、マウスの脳を還流固定し、その後取り出して凍結切片作成用のブロックを作製する。これをクライオスタットを用いて切片を作製し、神経活動マーカーであるc-Fosの抗体により染色して脳内に行ける発現細胞を同定する。c-Fos発現細胞を調べるためには抗体染色したスライドガラスを用いて、顕微鏡下で画像を撮影し、その組織の背景とのコントラストでより強く染色される細胞核を自動検出する方法を用いて陽性細胞の数を計測する。こうした解析により、どの脳領域で発現誘導されるか調べる。c-Fos発現細胞の解析のために、なつき行動のテストで増加するc-Fos陽性細胞が明らかになれば、そこに順行性および逆行性色素を注入し、神経細胞の連絡先の神経細胞を調べ、それにより能動的従順性に関わる神経回路を明らかにする。また、行動の詳細な解析も進める予定である。今年度はなつき行動と関連のある行動要素を明らかにする予定であり、さらなる詳細な多岐にわたる行動解析を実施する。これらの研究成果をもとに、その神経回路となつき行動との関連を検討する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 3件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] A role for the rare endogenous retrovirus β4 in development of Japanese fancy mice2020

    • 著者名/発表者名
      Tanave Akira、Koide Tsuyoshi
    • 雑誌名

      Communications Biology

      巻: 3 ページ: 53

    • DOI

      10.1038/s42003-020-0781-z

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Nested retrotransposition in the East Asian mouse genome causes the classical nonagouti mutation2019

    • 著者名/発表者名
      Tanave Akira、Imai Yuji、Koide Tsuyoshi
    • 雑誌名

      Communications Biology

      巻: 2 ページ: 283

    • DOI

      10.1038/s42003-019-0539-7

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The relationships between tameness and social cognitive skills of domesticated animals2019

    • 著者名/発表者名
      NAGAYAMA HIROMICHI、KOIDE TSUYOSHI
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Animal Psychology

      巻: 69 ページ: 127~135

    • DOI

      10.2502/janip.69.1.13

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Behavioral, neurological and genetic basis of tameness in mice2019

    • 著者名/発表者名
      Koide T.
    • 学会等名
      33rd International Mammalian Genome Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] i-GONAD法を用いた野生マウス系統の遺伝子改変の試み2019

    • 著者名/発表者名
      Koide T.
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
  • [備考] マウス開発研究室ホームページ

    • URL

      http://mgrl-lab.jp/index.html

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公開日: 2021-01-27  

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