研究課題/領域番号 |
19H03271
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
土松 隆志 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (60740107)
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研究分担者 |
上原 浩一 千葉大学, 国際教養学部, 教授 (20221799)
久保 健一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (60403359)
渡辺 均 千葉大学, 環境健康フィールド科学センター, 教授 (80301092)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 集団ゲノミクス / 自殖 / 自家不和合性 |
研究実績の概要 |
複数の形質が連動して進化する「シンドローム」はどのように生じるのか。我々は、植物の自家受精の進化に伴って起きる一連の花形質セット「自殖シンドローム」の進化を対象に、この問題にアプローチしている。本研究は、自家不和合性遺伝子座配列解析、リシーケンス解析、ゲノムワイド関連解析等を通し、自家和合(自殖)系統にみられる自殖関連の各形質を遺伝学的に解剖し、その進化過程を遺伝子レベルから詳細に解明することを目的としている。本年度はまず、自家和合・自家不和合系統それぞれについて、野生由来の個体の表現型(花粉数、胚珠数、花器官サイズ等)のデータを得たところ、系統間で大きな変異がみられることが明らかになった。第2に、計30系統についてIllumina Hiseq/DNBseq でリシーケンス解析を行い、ゲノムワイドな多型情報を得た。今後このデータに基づいて詳細な集団ゲノミクス解析を行う予定である。第3に、花サイズの大きな系統と小さい系統間で掛け合せたF2個体について表現型データ取得、QTL解析を行い、表現型を司る複数の遺伝子座を同定した。第4に、自家不和合性遺伝子座の配列解析を行い、自家和合性進化の原因変異の解析を行った。以上のように自殖性の進化について多角的に研究を展開しており、どのアプローチも順調に進んでいる。令和2年度も継続してこれらの解析を進め、まず集団ゲノミクスのデータおよび野生個体の表現型データをまとめて論文投稿を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、自家和合・自家不和合系統それぞれについて、野生由来の多数個体の表現型のデータを得たところ、系統間で大きな変異がみられることを明らかにした。また、計30系統についてIllumina Hiseq/DNBseq でリシーケンス解析を行い、十分な量の多型情報が得られた。さらに、F2個体を用いたQTL解析も順調に進んでおり、表現型に関わる複数の遺伝子座の同定に成功している。また、自家不和合性遺伝子座の解析については、従来型のPCR解析に加えてロングリードシーケンサーを用いた新手法の確立も進めている。以上のように自殖性の進化について多角的に研究を展開しており、いずれもおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、まず集団ゲノミクスのデータ解析を進め、野生個体の表現型データをまとめて論文投稿を行う予定である。QTL解析については新しいF2集団を作成し、同様に解析することで、独立に生じた自殖の進化に同じ遺伝子座の変化が関わっているのかについて解明する。自家不和合性遺伝子座の解析については、ロングリードシーケンサーを用いた新手法を確立し、多数個体に適用する予定である。
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