研究課題/領域番号 |
19H03272
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
西原 秀典 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (10450727)
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研究分担者 |
石丸 喜朗 明治大学, 農学部, 専任准教授 (10451840)
戸田 安香 明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員 (10802978)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 味覚受容体 / 脊椎動物 / 進化 |
研究実績の概要 |
本研究では味覚受容体遺伝子TAS1Rファミリーが顎口類の共通祖先から現在までにどのようなプロセスで配列進化と機能進化を遂げてきたのかを解明することが目的である。今年度末までに古代魚と呼ばれる比較的初期に分岐した魚類を中心とする31種の脊椎動物についてゲノムおよびトランスクリプトーム情報からTAS1R全長配列を同定し、そのうち12種が新規クレードを持つことを明らかにした。これにより脊椎動物の各系統におけるTAS1R遺伝子重複と消失の歴史がより詳細に明確になった。またこれらTAS1Rの周辺遺伝子群のシンテニー解析も進めてきた。様々な脊椎動物のシンテニー比較により、顎口類の祖先および硬骨魚類の祖先における遺伝子配置を推定した。この結果からTAS1Rは主にそれらの共通祖先において遺伝子重複を起こし、それに伴って染色体上でローカルおよび長距離の組換えによって遺伝子配置の変化が頻繁に起こってきたことを明らかにした。ただし一部の魚類では遺伝子配置が比較的保存されていることから、こうした遺伝子配置の進化パターンの違いを生じる要因の究明に今後取り組む余地があると考えられた。また培養細胞を用いたリガンドの特定実験は一部の魚類については完了しており、さらに別の種に関して着手している。発現解析についても順調に進行しており、一部のTAS1R遺伝子の発現パターンが明らかとなった。これらの機能解析と発現解析は次年度以降も継続する予定である。さらに最近新たに報告された脊椎動物の全ゲノム情報に基づいた遺伝子レパートリーの同定も拡大することを予定しており、これによりTAS1Rに見られる特異な進化プロセスの全容が明らかになると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム/トランスクリプトームデータからのTAS1R遺伝子ファミリーのレパートリーの同定はこれまで30種以上についておこなっており、順調に進行している。また予定していたシンテニー解析についても重点的におこない遺伝子配置の進化に関して興味深い結果が得られている。機能解析と発現解析に関しても複数のTAS1Rについておこなっており順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
脊椎動物の進化におけるTAS1R遺伝子の重複欠失パターンをより包括的に明らかにするため、最近全ゲノム配列が報告された魚類の遺伝子解析を重点的に進める予定である。また生物種によっては偽遺伝子化したTAS1R配列を多く持つ生物種も存在し、配列から機能の有無を推定することが困難な場合がある。そこで機能遺伝子であることの傍証を得るために遺伝子内部の保存配列の分布パターンの解析を試みる予定である。機能解析と発現解析も予定通り進め、論文発表に向けたデータを揃える予定である。
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