研究課題/領域番号 |
19H03277
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
石川 麻乃 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 助教 (20722101)
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研究分担者 |
山崎 曜 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 博士研究員 (40816021)
北野 潤 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 教授 (80346105)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生活史 / 季節性 |
研究実績の概要 |
生物の生活史戦略、つまり、彼らがどのように生まれ、成長し、繁殖し、死ぬのかは、多くの形質が統合されて成立する複雑な形質群である。一方、この生活史戦略は適応度に直接的に影響するため、環境に応じて近縁種/集団間で迅速に分化する。このことは、多形質を同時並行的に変化させ、生活史戦略を劇的に変える原因変異が存在することを示唆しているが、このような原因変異の同定や、それらの各変異の生理的機能や適応度への貢献度、また変異の起源や動態の検証は進んでいなかった。そこで、本研究では、集団間で異なる季節性生活史を複数進化させてきたトゲウオ科イトヨを用いて、これらを明らかにする。 今年度は、私たちが近年、淡水進出したイトヨで複数回独立に季節性繁殖の進化に寄与することを明らかにした甲状腺刺激ホルモンTSHb2について、その応答性の変化をもたらす遺伝子座(TSHb2 eQTL)が、生殖腺サイズなどの繁殖形質や体サイズなどの成長形質、また、それらを司るホルモン動態の変化にもたらす効果を定量化した。この結果、シス制御領域の変化により、このTSHb2の応答性の進化が生じている北米集団では、TSHb2 eQTLが、オスではアンドロゲン、精巣発達、腎臓発達の違いに、メスでは卵巣発達、肝臓発達、筋肉の発達の違いに、多面的に寄与することが分かった。一方で、トランス制御による多遺伝子座によってTSHb2の応答性の進化が生じている日本集団では、TSHb eQTLの効果は小さく、その直接的な貢献は精巣発達にしか見ることができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで私たちが得てきた、成長・繁殖の季節性マスター制御遺伝子である甲状腺刺激ホルモンTSHb2の応答性の変化をもたらす遺伝子座(TSHb2 eQTL)について、それぞれ適応度に直結する生殖腺や腎臓の発達における効果を定量することができた。その結果、シス変異によってもたらされるTSHb2の応答性変化とトランス変異によってもたらされるTSHb2の応答性変化について、その生理的機能や適応度への効果の違いを検証することができた。また、短日条件下の海型、淡水型を用いた下垂体の一細胞RNAシークエンスについても、すでに実験を終えて解析段階に進んでおり、TSHb2の発現変化をもたらした原因変異の同定と、生理的機能と適応度に対する効果、その由来や過去の自然選択の解析が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在得られている短日条件下の海型、淡水型を用いた下垂体の一細胞RNAシークエンスのデータ解析を進め、日長変化後の下垂体でTSHb2と共発現し、TSHb2よりも早く発現変動する転写因子をスクリーニングする。海型のTSHb2のシス配列をゼブラフィッシュ培養細胞ZF4細胞に共導入することで、TSHb2のシス配列に結合する転写因子を同定する。更に、海型/淡水型シス配列の間のSNPや欠失をスワップさせ、原因変異を同定する。また、原因変異の周辺領域を対象にした系統解析と分岐年代推定から、各変異が祖先集団に既存の変異か、新規変異かを検証し,変異の生じた時期を推定する。更に、ゲノムスキャン解析を行い、原因変異の周辺領域のFSTやFay&Wu’s Hなどの値をバックグラウンドと比較し、各地域での自然選択の有無を検証する。
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