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2020 年度 実績報告書

1+1=1、2つの生物がどのように1つの生物になったかをゲノムで読み解く

研究課題

研究課題/領域番号 19H03282
研究機関筑波大学

研究代表者

石田 健一郎  筑波大学, 生命環境系, 教授 (30282198)

研究分担者 白鳥 峻志  筑波大学, 生命環境系, 助教 (70800621)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード二次共生 / 細胞進化 / 葉緑体 / クロララクニオン藻 / ケルコゾア
研究実績の概要

2020年度は、前年度確立したミノリサ(Minorisa sp.) の細胞回収法により、ゲノムシーケンスに十分な量の細胞を得た。本種は餌バクテリアとの共培養が必要で無菌培養できないため、無菌化することなくそのままPacBioシーケンサーを用いて配列リードを得たのちに、アセンブリによりバクテリア由来の配列を予測し除去した。その結果、ミノリサのゲノムとして29 Mbpのアセンブリが得られ(180スキャフォールド、N50: 308 kbp)、12,889タンパク質コード遺伝子の存在が予測された。このゲノムはミノリサが属するリザリア内で、寄生性のPlasmodiophora(24 Mbp)に次いで小さく、本種がシンプルな体制をもつピコプランクトンであることを反映していると思われた。
当初計画では色素体の祖先候補としてアオサ藻の一つであるオストレオビウム(Ostreobium sp.)のゲノム解読を予定していたが、既に海外でゲノム解読されたことが判ったため、さらにアオサ藻のデータを充実させてより詳細な解析を行うため、独自に培養株化に成功したアオサ藻モツキヒトエグサ科の1種について、全ゲノム解読を実施することとした。コロナ化のためにPacBioシーケンサーでの解読が完了できなかったため、予算を繰り越して次年度での実施となったが、MinIONシーケンサーを用いて、ドラフト配列の取得まで完了した。
ミノリサ系統群の次にクロララクニオン藻に近縁な「クレード2」に属するケルコゾア生物の探索においては、コロナ禍のため近場でのみの探索となり、成果を得るに至らなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初計画において色素体の祖先候補としてゲノム解読を予定したアオサ藻の一つオストレオビウムは既に他所でゲノム解読されたことが判った為、2020年度にはより詳細な解析を目的として、独自に培養株化に成功したアオサ藻モツキヒトエグサ科の1種について、全ゲノム解読を実施することとした。そこで本種について、培養株の無菌化を進め、最終的にゲノム解析に十分な量の細胞を得て、ゲノムDNAを調製してシーケンスを業者に外注した。しかし、世界的なコロナ禍によりPacBioでのロングリードシーケンス解析に必要な解析用試薬の取り寄せができず、ゲノム配列決定が完了しない旨の連絡が令和3年3月5日に業者からあった。そこで発注を取り下げ、予算を次年度に繰越し、本種の全ゲノム配列の取得と解析を次年度に実施することになったため、当初計画より研究が遅延した。また、ミノリサ系統群の次にクロララクニオン藻に近縁な「クレード2」に属する生物の探索においても、コロナ禍のため近場でのみの探索となったため、発見には至っていない。しかしながら2020年度に実施を計画した他の項目(ミノリサのドラフトゲノム配列取得、オストレオビウム属藻のゲノム配列の取り寄せ)については年度内に概ね順調に進展したといえる。

今後の研究の推進方策

クロララクニオン藻の宿主要素の祖先としてミノリサ、および葉緑体の祖先として取り寄せたアオサ藻オストレオビウムのゲノム配列について詳細な解析を進め、各ゲノムの特徴を明らかにする。また、ミノリサに近縁なもう一つの宿主要素候補、ラブドアメーバの培養株についても、ドラフトゲノムを取得する。さらに、アオサ藻のデータを増やしより詳細な比較ゲノム解析を実施するため選んだ別のアオサ藻モツキヒトエグサ科の一種について、PacBioより安価なMinIONシステムを用いて配列を取得する。
ミノリサ系統群の次にクロララクニオン藻に近縁な「クレード2」に属する生物の探索については、温暖な沖縄などより発見の確率が高い地域でのサンプリングを実施する。
既知のクロララクニオン藻ビゲロウィエラのゲノム配列と合わせて、宿主要素のミノリサ、ラブドアメーバのゲノム配列、共生藻(葉緑体)要素のオストレオビウム、モツキヒトエグサ科の一種のゲノム配列が揃うため、それらを用いて比較ゲノム解析を実施し、クロララクニオン藻での二次共生による葉緑体獲得に伴うゲノム進化を明らかにする。

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公開日: 2022-12-28  

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