研究実績の概要 |
動物の体表には多彩な模様パターンが見られる。模様パターンの多様性は、個々の生物分類群に特有の「局所的多様性」と、系統をまたいだ複数の分類群に共通する「大域的多様性」という2つのレベルに分けることができると考えられる。本研究課題では、2つの多様性レベルとそれらに関わるパターン形成メカニズムの違いを踏まえながら、模様パターンの多様性が「なぜ、どのように」生み出されてきたのかを明らかにすることを目指している。本年度は、昨年度に引き続き、現生の魚類全科・全属の魚種を対象とした独自の大規模魚類模様パターンデータベースの構築および整備を進めた。さらに、これまでに蓄積してきた海産、淡水産を含む18,000種あまり、約4,000属の形質データをもとに、系統比較法(Phylogenetic comparative methods)の適用を試みた。本研究では魚類全体で頻出する11の模様パターンモチーフに着目しているが、系統比較法の適用にあたっては、モチーフ3つずつの組み合わせを取り上げ、それぞれのモチーフが独立に進化する独立モデルと、あるモチーフの進化(獲得・喪失)が他のモチーフの状態に依存して遷移する非独立モデル、さらに、3つのうち1つのモチーフのみ独立に獲得・喪失が生じる部分的独立モデルを考え、シミュレーションによる検討を行った。この結果、調査対象とした主要魚類10目中8目において、ある種の模様パターンモチーフ間の相関進化を示唆する結果が得られた。
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