研究実績の概要 |
動物の体表には多彩な模様パターンが見られる。模様パターンの多様性は個々の生物分類群に特有の「局所的多様性」と系統をまたいだ複数の分類群に共通する「大域的多様性」という2つのレベルに分けることができると考えられる。本研究課題では2つの多様性レベルとそれらに関わるパターン形成メカニズムの違いを踏まえながら模様パターンの多様性が「なぜ、どのように」生み出されてきたのかを明らかにすることを目指している。このため脊椎動物の中でも最も多くの種が存在するグループである魚類を対象とした独自の大規模模様パターンデータベースの構築および整備を進めてきた。現生魚類としては淡水産、海産を合わせた36,000種あまりが知られているが、これらが属する全科・全属を網羅する形質データを取得し、系統情報と合わせた解析を行った。魚類全体によく見られる模様パターンとして、体表の広い領域に規則的に分布する小斑点や縞模様の他、特定の領域に現れることが多い鞍状斑や眼状紋等に着目し、これらのモチーフがどのような遷移過程を経て出現あるいは喪失し得るのか、系統比較法等の手法を用いて明らかにした。これらの解析の結果、大域的な多様性をもたらす機構の例として規則的な配置様式をもつ模様モチーフ間にある種の相関進化の可能性が示唆された。さらに、代表的な模様パターンのバリエーションを含む複数の魚類分類群に着目し詳細な系統解析や集団構造解析を行うことでそれらの背景となるメカニズムについての検討を行った。
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