研究課題/領域番号 |
19H03284
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
遊佐 陽一 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (60355641)
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研究分担者 |
關野 正志 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), グループ長 (90371799)
山口 幸 東京女子大学, 現代教養学部, 講師 (20709191)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 性システム / 性配分 / フジツボ / フクロムシ |
研究実績の概要 |
動物界にみられる性システム(雌雄同体や異体など)は極めて多様であるが,ある環境下でどのような性システムが進化するのかについて,理論・実証研究ともに十分な答えを得ていない。本研究では,広義のフジツボ類を対象に,性システムの多様性とそれを決める要因について多角的にアプローチする。そのために,4つのサブテーマを設定し,2020年度には以下の研究を行った。 1.多種における性システムの解明:本年度は深海性ミョウガガイ類を中心に,性システムを引き続き調べた。加えて,根頭類においても性システムの研究を進めた。また,フジツボフクロムシの生活環を野外定期サンプリングにより調べ,論文として出版した(Yabuta et al. 2020)。生活史に沿った性システムの実態を明らかにするために,フサフクロムシの生活環を野外定期サンプリングにより引き続き調べた。 2.モデル種における種内変異の解析:今年度は,雄性異体種であるオノガタウスエボシについて,遺伝子解析に使用できるマイクロサテライトマーカーを11組開発した(Kobayashi et al. 2020)。 3.種間比較による進化パターンとプロセスの抽出:昨年度に引き続き,深海のミョウガガイ類を中心に,得られた種からDNAを抽出し,核とミトコンドリアの遺伝子塩基配列を決定した。 4.新たな数理モデルの作成と要因の解析:フクロムシ類における季節的な雄の出現パターンに関する数理モデルを作成した(Yamaguchi and Iwasa 2020)。またフジツボ類でも例外的にみられる放精種について,配偶子が届く範囲を決める,より汎用的な関数形を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4つのサブテーマそれぞれである程度の進展がみられ,3本の論文を出版したため。
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今後の研究の推進方策 |
1.多種における性システムの解明:深海種を中心に浅海種も含め多様な完胸類の種で性システムを引き続き調べる。加えて,根頭類においても性システムの研究を進める。 2.モデル種における種内変異の解析:複数種をモデル生物として,詳細な性システムの種内変異を解析する。今後は,雄性異体種であるハサミエボシまたはオノガタウスエボシについて,全生活史にわたる完全飼育を引き続き試み,モデル生物化を目指す。室内飼育および定期サンプリングにより,フクロムシ類の生活史のデータを得る。遺伝子解析により,雄と矮雄の適応度の評価を試みる。 3.種間比較による進化パターンとプロセスの抽出:複数遺伝子の塩基配列にもとづく詳細なフジツボ類の系統樹を作成し,性システムの進化過程とその決定要因を解明する。そのために,今後は,引き続き得られた種からDNAを抽出し,複数遺伝子の塩基配列を決定する。 4.新たな数理モデルの作成と要因の解析:交尾するフジツボ類だけでなく,放精するフジツボ類,さらには放卵放精をする生物も考慮して,配偶子が届く範囲を決める,より汎用的な関数形をモデルに取り込む。これによって,性配分理論と生活史戦略理論の融合をさらに発展させ,動物全般に適用可能な包括的なモデルを完成させる。今後当面は,放精する種についてモデルの改良を継続する。
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