研究課題/領域番号 |
19H03290
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
浅原 正和 愛知学院大学, 教養部, 准教授 (20709399)
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研究分担者 |
岸田 拓士 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 准教授 (40527892)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 哺乳類 / 臼歯形態 / 進化 / 歯の形態 / 場の理論 / 三結節説 |
研究実績の概要 |
研究年次初年度から継続している解析結果の論文化を進めた。哺乳類型臼歯形態形成要因の伝統的学説である場の理論と関連して、食肉目や鯨偶蹄目のなかで臼歯形態を単純化させた分類群において顎骨内における歯の萌出部位の変化が起きているかどうかを研究代表者の保有している画像データを解析することで調査した。系統間比較法を用いた解析の結果、臼歯形態と萌出部位との間に関連性がみられるという結果が得られた。この解析結果を論文化し、現在投稿中である。しかし、査読者の指摘等により、追加の解析が必要になるなど、論文発表までには少々時間がかかっている。これに加え、同様の仮説に基づいた単弓類における解析も行った。しかし、単弓類における解析は頭骨形態の形態の幅が大きいこともあって利用できる指標が不足し、結果は哺乳類で行った解析ほど明確にはならなかった。こちらも論文化を進めている途中である。また、これらの解析に加え、画像解析の中で副次的に得られたレバーアームのてこ比と食性との関連を食肉目において調査し、その結果も論文化して投稿中である。これら形態学的解析に加え、本研究のもうひとつの柱である分子進化の解析も順次進めた。まずは食肉目の臼歯形態多様化の要因解明のため、複数の歯の形態に関わる分子についての解析を探索的に行ったが、今のところ明瞭な結果は得られていない。一方、クマ科において臼歯形態の進化に影響したことが研究代表者らによって明らかされているBMP7について、食肉目全体でそのアミノ酸置換と臼歯形態の変化量の相関を調査した。その結果、それらの間に相関がみられ、この結果も論文化を適宜進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画序盤におけるデータ取得は順調に進んだものの、データの解析と論文化に予想以上の時間を要している。とくに複数の解析を同時並行的に進めていたこともあり、現時点では投稿中、あるいは投稿準備中の段階にある論文が複数溜まっている状況にあるものの、それらの出版が遅れている状況にある。また、序盤に注力していた比較形態学的研究に時間を費やしてしまったため、それに続いて行った分子進化の解析結果の論文化もそれに応じて遅れてしまっている状況である。しかし、研究の結果は順次蓄えられつつあり、それらを順次論文化して出版することで、最終的に研究計画で予定していた研究内容の結果を発表していくことが出来ると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現状で本研究は形態解析の結果の論文化の遅延と、分子進化の解析遂行に関わる人的資源の不足に直面している。これには形態解析において解析しなければならない内容が研究過程において増加したこと、当初の予算から減額されていることによる予算の不足といった要因が挙げられる。とはいえこれらの問題は現在研究資源を占有している、投稿中の食肉目・鯨偶蹄目を利用した論文に関わる作業が終了しだい、順次解決していくものと思われる。とくに分子進化の解析とその結果の論文化については、コロナ禍の中ながら研究分担者との密な打ち合わせをオンラインで行っており、その中で研究の効率的な進め方を構築しつつある。この基盤の上で、現在形態解析の論文に向けられている資源がそちらに向けられることで、比較的短期間で目標とする解析を進めていくことができると考えている。
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