研究課題
本研究は,多地点・高頻度環境DNA観測を行い,さまざまな時空間スケールにおける魚類群集構造の変動様式をMiFish法によって明らかにすることを第一の目的とした。また,MiFish法で得られたデータを最新の手法で定量化することにより,先の調査で明らかになった魚類群集構造の形成・維持機構を解き明かすことを第二の目的とした。本年度は,2017年8月から継続して行ってきた隔週調査を房総半島南部の岩礁海岸に設けた11測点で行い,2019年8月には計50回の調査を終えることができた。これら50回の調査で得られた計550サンプルについては,環境DNAの抽出とライブラリの調整を既に実施し,MiFish法による予備的解析が終了した。次年度に,本ライブラリの定量を別途行い,サンプル相互で比較可能なものにする予定である。また,この隔週調査はその後に月別調査に移行し,現在58回目までの調査が終了している。今後,月別調査を継続していくことにより,魚類群集の長期変動をモニタリングすることになる。さらに,2019年11月には銚子の犬吠埼から房総半島南端の野島崎を経由して東京湾奥に至る千葉県沿岸全域に計100地点を設けて環境DNA調査を行った。この調査の目的は県という一つの行政区の魚類群集を網羅することにより,種数や群集構造が空間的にどのように変化するのか見ることにあった。これら100サンプルについては,環境DNAの抽出とライブラリの調整を既に実施し,MiFish法による解析が終了した。本調査で計402種の沿岸魚類が検出され,種数については南高北低の傾向が太平洋岸でも東京湾側でも認められた。また,魚類群集の地理的構造も明瞭に捉えることができた。
1: 当初の計画以上に進展している
隔週調査を1つの欠測値もなく予定通りに終えることができ,計550サンプルの実験をすべて終え,大量のデータを出すことができた。予備的データ解析の結果も予想以上のものが得られた。また,隔週調査を順調に月別調査に移行することができ,多地点高頻度の長期観測という魚類群集でかつてない時空間を網羅した調査が現実的になった。また,千葉県沿岸全域を網羅する100地点の調査を行うことができ,そのデータの質は予想を上回精度のものであったことは,当初の計画を超えた成果として上げられる。
隔週調査で得られたサンプルの定量化を行う。この定量化には,11地点で網羅的に検出されたクロダイの環境DNAを定量化することにより魚類全体の環境DNA量の定量を試みる。それと並行して,ライブラリ調整時に半定量したデータも援用しつつ,この手法の有効性を検討する。また,前年度に引きつづき月別調査を継続して魚類群集の長期変動をモニタリングする。調査を開始してから年々水温が高くなっているので,これに対する応答があるかどうかも検討可能となる。また,千葉県沿岸全域調査で検出された402種の種数累積曲線に基づくと,まだ未検出の種が相当生息することが予測された。同様の調査を最低でも2回行ってこの予測がどの程度再現できるのか試してみる。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
Environmental DNA
巻: 3 ページ: -
Ecology and Evolution
巻: - ページ: -
Hydrobiologia
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https://doi.org/10.1007/s10750-019-3891-1
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https://researchmap.jp/mum-usagi