研究課題/領域番号 |
19H03294
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大原 雅 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (90194274)
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研究分担者 |
北村 系子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00343814)
横溝 裕行 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 主任研究員 (30550074)
荒木 希和子 立命館大学, 生命科学部, 講師 (30580930)
山岸 洋貴 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (40576196)
高田 壮則 北海道大学, 地球環境科学研究院, 名誉教授 (80206755)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 植物生活史 / 多年性林床植物 / 長期モニタリング / 繁殖生態学 / 個体群統計学 |
研究実績の概要 |
本研究では、植物の生活史研究において、これまで断片的に研究が行われてきた「個体群生態学」と、「分子生物学」の進展により詳細に実態が明らかになってきた「繁殖生態学」を結びつけ、さらに「個体群生態学」の側面から静的に集積された個体の長期モニタリングデーターを、「数理統計学」による時間軸を入れた動的な解析の側面を入れることで、より鮮明に種の生活史戦略の全体像を明らかにする。また、研究対象種群を落葉広葉樹林に生育する林床植物に絞ることにより、類似した安定的環境下でさまざまな分類群で生じた多様な生活史の進化と、その適応戦略の実態をより明確に把握することを目的としている。また、分子マーカーの導入により革命的に進歩した植物の繁殖生態学において、種の生活史の全貌を明らかにするためには、個体群動態に関するデータによる裏付けが必要であることを再認識し、それに必要なデータセットならびに具体的な研究アプローチを提供する。そして、長期モニタリングデータに基づく推移確率行列は、今後蓄積されてくる多くの植物群・動物群・生態系における個体群統計遺伝学的解析の基礎を提供できる。 初年度である2019年は、これまで長期の個体追跡モニタリング(15年ー30年以上)を行ってきた林床性多年生植物種(13種)を対象とし、モニタリングの継続を中心とした「野外生態調査」、生活史段階の異なる各個体(実生、未成熟個体、成熟個体)から葉を採集し、AFLP分析、マイクロサテライトマーカー分析を行った。さらに、各種個体群に関する個体群統計学的データをもとに繁殖率、死亡率、種子繁殖依存率、栄養繁殖依存率をパラメーターに持つ個体群の絶滅確率推定のための数理モデル構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要にも記したが、2019年はこれまで長期の個体追跡調査を行ってきた林床性多年生植物種(13種)を対象とし、モニタリングの継続を中心とした「野外生態調査」、生活史段階の異なる各個体(実生、未成熟個体、成熟個体)から葉を採集し、AFLP分析、マイクロサテライトマーカー分析を行う「分子遺伝学実験」、各種個体群に関する個体群統計学的データをもとに繁殖率、死亡率、種子繁殖依存率、栄養繁殖依存率をパラメーターに持つ個体群の絶滅確率推定のための数理モデル構築を行う「数理統計学」の3つのアプローチが順調に進んだ。 しかし、当該年度末に生じた新型コロナウイルス感染症の拡大のため、研究に関する情報交換の機会および、成果発表を予定していた生態学会(名古屋)の開催が中止となった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症の収束がまだ見えない状況であるが、移動が許される範囲で野外調査を実施するとともに、これまで採集した試料を用いて「分子解析実験」を行う。また、「数理解析」に関しても、これまでのモニタリングデータを中心としたシミュレーションを行う。研究打ち合わせを含めた相互の情報交換も、Zoom などの遠隔ミーティングシステムを活用して行う。成果発表に関しては、学会もオンライン開催も定着してきていることから、積極的に発表を行う。また、これまで集積されたデータを基盤とした数理モデルに関しては、データの追加を待つことなく解析を進め、学術論文として公表する。
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